犬の睾丸(精巣)が膨らんだ後、萎んで皮がたるんだ…病気の可能性は、去勢手術できる?【ペットドクター相談室】

6ヶ月になります。4.5ヶ月頃には睾丸の膨らみが少し確認でき、6ヶ月に入り膨らみがはっきりしてきたのですが片方だけになり、今は片方の膨らみも萎んだ状態になってしまいました。(膨らみの萎んだ場所は皮がたるんだ感じ)何か病気なのでしょうか?去勢手術を考えていたのですが…できるのでしょうか?とても心配です。病院で診察を受けた方がいいでしょか?アドバイスをお願いします。(トイプードル、ノアママさんの相談)【お答えします】福井県獣医師会 開業部会 田辺獣医科医院(福井県敦賀市)田辺哲也院長

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 生後6カ月のトイプードルで、陰嚢(いんのう)が睾丸(こうがん)と思われる臓器により一時腫大したものの、片側ずつ退縮し、現在は両側ともに退縮したというケースで、それでも去勢手術は可能かというご相談にお答えします。

犬の精巣、生まれた後に移動する?

 犬の睾丸(精巣)は胎児期には腹腔内に存在しますが、出生後まもなく、後肢の付け根にある筋肉と筋肉の隙間「鼠径管(そけいかん)」を通過して陰嚢内に下垂してきます。通常はいったん陰嚢に下垂した精巣は陰嚢内にとどまりますが、精巣を支える周囲組織が脆弱な若齢期では、陰嚢から鼠径部(そけいぶ)、あるいは腹腔内(ふくくうない)へ再移動することが稀にあります。

 また、陰嚢以外の部位にとどまり動かなくなることもあります。陰嚢内に存在しない精巣のことを停留精巣(ていりゅうせいそう)または潜在精巣(せんざいせいそう)といい、停留する部位により鼠径部停留精巣とか腹腔内停留精巣といいます。停留精巣は将来腫瘍化する可能性が高まりますので要注意です。

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まれに精巣がない場合も…

 また、ごく稀にですが生まれながらにして片側あるいは両側の精巣が欠如している子もいます。しかしながら、ご相談のトイプードル君の場合、精巣は必ず両側に存在しているはずですので去勢手術は可能です。ただ、精巣の停留部位により切開部位が異なります。陰嚢内に存在していれば陰嚢基部を、鼠径部であれば鼠径部を、腹腔内であれば下腹部正中切開から開腹して摘出することになります。

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去勢手術のメリット・効果とは

 犬の去勢手術は、将来起こりうる精巣腫瘍(せいそうしゅよう)、前立腺肥大(ぜんりつせんひだい)、会陰(えいん)ヘルニアなどの疾患を未然に防ぐほか、問題行動を未然に防ぐ、あるいは軽減するなどの効果が期待できます。特に会陰ヘルニアは高齢の雄犬に発症し、頑固な便秘に苦しむ、たいへんつらい病気です。治療には大掛かりな手術が必要となるため、若いうちに去勢手術を受けさせてあげてほしいと思います。

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