【シンガポール】東南アの23年成長率下方修正[経済] ア開銀、2カ国の外需減退で

アジア開発銀行(ADB)は19日、2023年の東南アジア11カ国の実質国内総生産(GDP)成長率が前年比4.6%になるとの見通しを示した。4月に公表した前回調査の予想値(4.7%)から0.1ポイント下方修正した。外需減退が背景にある。シンガポールとベトナムの2カ国で予想を大きく引き下げた。24年は東南アジア全体で4.9%となり、前年を上回るとみている。

アジア開発銀行は、2023年の東南アジア11カ国のGDP成長率が前年比4.6%になるとの見通しを示した=シンガポール中心部(NNA撮影)

19日に発表した「アジア経済見通し2023年7月版」によると、23年の東南アジア全体の成長率は、22年実績の5.6%を1.0ポイント下回る見込みだ。

東南アジア主要6カ国の23年の成長率予測を見ると、シンガポールは前回調査の2.0%から1.5%へと0.5ポイント下方修正した。ベトナムは0.7ポイント引き下げて5.8%としている。インドネシア、マレーシア、フィリピンは前回調査から据え置いた。6カ国中、唯一上方修正したのはタイで3.3%から3.5%に改定した。

ADBは東南アジア経済について、「23年上半期(1~6月)は民間消費がけん引役となり、内需が堅調だった。労働市場の改善や所得上昇も見られた。一方、外需減速で製造業の輸出の伸びが鈍化している」と説明した。

シンガポールについては、5月の製造業購買管理者指数(PMI)が49.5まで下がり、経済縮小の兆しが出ていたと指摘した。米政府の金融引き締めの影響が金融サービス業界に影を落とし、貿易関連業界も今後さらなる低迷が見込まれると説明。物価高を受けて民間消費の伸びも鈍化し、融資コスト拡大で企業の投資額も伸び悩むとの見方を示した。

ベトナムも外需減速や製造業低迷の影響が出ている。北部で電力需給が逼迫(ひっぱく)して計画停電が実施されたことや、不動産業界で開発業者の資金繰り悪化によりプロジェクトが相次いで中断されていることなどもマイナス材料となっている。

タイは23年上半期に民間消費やサービス輸出が好調だった。所得増加や観光業の活性化などが背景にある。

24年の東南アジア全体の経済成長率は、前回調査の5.0%から0.1ポイント下方修正した。ただ23年の予想値である4.6%を0.3ポイント上回っている。観光業の活性化や中国経済の回復への期待がプラス材料となっている。

■物価上昇率も下方修正

23年の東南アジア全体の物価上昇率は4.3%と予想。前回調査の4.4%から引き下げた。最も下方修正の幅が大きかったのはベトナムで4.5%から4.0%に改定。エネルギー価格の低下や食品の安定的な供給が見込まれるためだ。

インドネシアは4.2%から3.8%に引き下げた。最も予想値が高いのはフィリピンで6.2%。前回調査から横ばいだった。

24年の東南アジア全体の物価上昇率は3.2%に下方修正。前回調査では3.3%だった。主要6カ国のうち5カ国で予想値を据え置いた。ベトナムは4.2%から4.0%に引き下げた。

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