居場所は夜の駅前 水戸駅南口、集う若者 家・学校になじめず

JR水戸駅南口ペデストリアンデッキで、若者に闇バイトの危険性などを伝えるボランティア団体メンバーたち=水戸市宮町

JR水戸駅南口前のペデストリアンデッキやコンビニ店前で、夜遅くまで集まる若者たち。家や学校にはない居心地の良さを求めて市内外から夜の水戸へ向かい、オートバイの爆音走行や周辺での違法駐車などトラブルが起きることも。人目に付きにくい夜の街に集う若者たちを犯罪から守ろうと、県警水戸署などが実態把握に乗り出した。

「家にいると息苦しい」「ここに来れば誰か知り合いがいると思って」

22日午後8時半過ぎの同駅南口。パトロール中の警察官が、近くのコンビニ店前で座り込む少女たちに話しかけると、そんな答えが返ってきた。

少女たちは、ほぼ全員が2006年生まれの17歳。生まれ年にちなんで、自分たちを「06組」と呼ぶ。出身地や出身校はバラバラ。高校生もいれば、働いている子もいる。交流サイト(SNS)で知り合い、いつしか集まるようになった。

「学校では浮いてるし」。別の少女は、親や学校の同級生とは違う人間関係に居心地の良さを感じている。目的はなく、ただ話すだけ。他の少年グループと行動を共にすることもあるが、待ち合わせしているわけではない。その場でたまたま一緒になるだけだ。

同駅近くに集まる若者の中には危険を感じることもあるという。

高校2年の女子生徒(17)は「一人の時、歳の離れた男の人から『遊ぼう』と声をかけられて怖かった」と打ち明ける。別の少女は、大人から「高時給」の仕事を紹介された。それでも「みんないろいろある。ここでは自分らしくいられる」と表情は明るい。

同駅南口周辺には、小規模の少年グループも複数ある。少年らによると、違うグループ同士でも、SNSで「今日どこそこにいく」「駅前で検問やってる」と情報交換しているという。

同駅南口に集まる若者について、水戸署幹部は「(同県)城里町や笠間市など、水戸の周辺から来ている子も多いようだ」と指摘する。

夜間でも人の往来があり、見物人も多い同駅南口。7月初旬の午後10時ごろには後輪だけで走る「ウィリー走行」を披露したり、警察車両の前を速度超過で突っ切る車両もあったりして、見回り中の署員は「追いかけても向こうを楽しませるだけ」と渋い表情。ただ、オートバイの整備はきちんとしてあるらしく「走るのが好きなんだろう。うるさくせず乗ってくれれば」とこぼした。

駅前に集まるため、周辺のカラオケ店や居酒屋の駐車場では若者のオートバイが無断駐輪されているとみられ、同署には放置車両に関する相談が寄せられているという。

同署などは22日、同駅南口で非行防止と爆音対策のキャンペーンを実施。少年相談員や暴走族相談員なども加わって、駅周辺の若者たちに「危ないから夜遅くなる前に帰って」「闇バイトの募集には気を付けて」と呼びかけた。

通行人から「寝入りの時にうるさくてつらい」「取り締まりに力を入れて」などの声が上がる同駅南口。同署の宇佐美旬地域官兼地域3課長は「根が深い問題。いたちごっこかもしれないが継続して対策に力を入れる」と語った。

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