乗客の減少を理由にしたバス路線の減便が滋賀県内各地で相次ぐ中、大津市の山中、比叡平両地域では、バス利用の機運を盛り上げるイベントを開催するなど、住民が便数の復活を目指して動きだしている。減便は「地域の死活問題だ」として、住民主体の取り組みに力を入れている。
6月上旬、両地域の住民ら約60人が2時間かけて比叡山頂付近まで歩いて登る半日ハイキングを楽しんだ。新緑や眺望を満喫した後、参加者が帰路に利用したのは、山頂近くのホテルから両地域を経由して京都市内の三条京阪へ向かう路線バスだ。ハイキングは、両地域の住民でつくる「山中比叡平学区まちづくり協議会」が企画した。
同協議会の大木文雄会長(74)は「バスの重要性を再確認し、減便問題を地域全体の課題と捉えてもらうきっかけにしたかった」と狙いを話す。2月には近江神宮まで歩いて帰りに路線バスを使うツアーを実施しており、今秋にも3回目を計画している。
比叡山南側の中腹にある両地域には、計約2700人が暮らす。比叡平地域の中学生は皇子山中(大津市)、山中地域は近衛中(京都市左京区)へそれぞれ路線バスで通学しているが、両地域と大津、京都両市街地を結ぶ京阪バスは昨年12月、赤字を理由に大幅な減便を実施した。
「公共交通という生活の支えを失うと、転出者の増加や転入者の減少を招き、地域の活力を失うことになりかねない」と危機感を強めた同協議会は対策を協議。バスを身近に感じてもらう催しを始めることにした。
このほか、路線バス沿線の見どころを紹介する冊子の発行も計画。8月以降に作成準備を始め、約1年をかけて完成を目指すことにしている。
減便を受け、大津市教育委員会は京阪バスに1便あたり1万1千円を支払って週1回ほどの臨時便運行を始めたほか、大津市と京都市もこれまで運行に対する補助金の対象ではなかった山中、比叡平両地域と京都市街地を結ぶバス路線に来年度から支給を検討するなど、行政側も対策に乗り出している。
住民の署名を添え、両市などに補助金増額を求める要望書の提出準備を進めている同協議会の大木会長は「多種多様な手段を使って何とか便数を元に戻し、地域の活性化につなげたい」としている。