【中国】VWが小鵬の5%株取得へ[車両] 1千億円拠出、電動車事業強化

ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は26日、中国の新興「新エネルギー車(NEV)」メーカーの広州小鵬汽車科技(Xpeng)に出資すると発表した。7億米ドル(約980億円)を投じ、小鵬の株式4.99%を取得する。今後は電動車開発の分野で小鵬との協力を強化。2026年には共同開発したVWブランドの電動車2車種を発売する。中国電動車市場で国内企業が急速に台頭していることに対抗する狙い。

VWは、小鵬の米国預託株式(ADS)を1ADS当たり15米ドルで取得する計画。取得完了後は、小鵬の董事会(取締役会)にボードオブザーバー(議決権はないが、議論に参加できる取締役会構成員)を1人送り込む。

小鵬への資本参加の目的については、「急速に発展する中国の電動車市場に全面的に参画するため」と説明。資本参加を機に、電動車開発の分野で小鵬との協力を深める方針を示した。

現時点では、26年に共同開発した電動車を2車種発売する計画。同2車種はVWブランドとし、中国市場だけに投入する。

VWは今年5月末に自動車開発を手がけるグループ会社、大衆汽車(中国)科技(VCTC)を設立。VCTCが小鵬との共同開発に当たる。VCTCは将来的に2,000人の専門家を引き入れ、本社以外では最大の研究開発(R&D)組織とする計画だ。

中国政府は数年前まで乗用車製造分野に外資の出資規制を敷いていたため、多くの海外自動車メーカーは合弁企業を通じて中国事業を推進してきた。海外大手メーカーが中国の新興NEVメーカーに出資するのは異例で、今回の2社の動きが新たな潮流を生み出す可能性もある。

■瀬戸際のXpeng

VWは昨年、世界で848万台を販売。このうち中国は240万台で約3割を占めており、中国事業の強化は同社の成長に欠かせない。

ただ、中国市場を取り巻く状況は厳しくなっている。中国での成功の鍵となる電動車市場で、国内企業が台頭しているためだ。

VWが22年に中国で納車した電気自動車(EV)は、前年比51.6%増の18万600台。大幅な伸びを記録したが、EVを中心とする中国のNEV市場は93.4%増の689万台と、VW以上の伸びを示した。国内NEV最大手の比亜迪(BYD)が2.5倍の187万台だったことも踏まえると、VWはEV事業強化に向け新たな一手が望まれる状況だった。

一方、小鵬も改革が必要な状況に陥っていた。同社は15年の設立以降、有力新興メーカーの一つとして注目されてきたが、近年の業績は悪化している。

22年12月期は91億元(約1,790億円)の赤字を計上。赤字額は前年から9割弱拡大した。新型コロナウイルス流行の影響がおおむね消失した23年1~3月期も業績は上向かず、赤字額は前年同期比5割弱増の22億元だった。

中国NEV市場は国内外の老舗企業のほか、理想汽車(Liオート)や上海蔚来汽車(NIO)といった新興メーカーがひしめいている状態で、小鵬は激しい競争に苦しんでいる格好。VWとの提携で、活路を見出したい考えだ。

■アウディは上海汽車と提携深化

VWは、傘下のアウディも中国企業との協業を進めると発表した。中国最大手の上海汽車集団とハイエンドEVの開発などで協力し、中国NEV市場での未開拓分野に開発車種を投入する計画を示した。ハードウエアにとどまらず、ソフトウエアの面でも最先端の製品を投入する考え。

アウディの中国での販売台数は同社全体の3分の1を占める。ただ、VWのオリバー・ブルーメ最高経営責任者(CEO)は先月、アウディの中国EV分野での競争力が不足しているとの見方を表明。地域戦略を見直し、30年をめどに中国市場向けの製品を開発する方針を示していた。

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