「4回転」と高い表現力が武器 兵庫・西宮の17歳、世界の銀盤へ フィギュア男子・垣内珀琉選手、表彰台狙う

ジュニアGPシリーズ出場に向け調整する垣内珀琉選手=西宮市鳴尾浜1、ひょうご西宮アイスアリーナ(撮影・吉田敦史)

 西宮で生まれ育った17歳が、世界の銀盤に挑む。8月に開幕するフィギュアスケート男子のジュニア・グランプリ(GP)シリーズ第2、第5戦に、兵庫県西宮市在住の高校2年・垣内珀琉(はる)選手が出場する。全7戦のうち2戦の切符を得ているのは、国内の男子では3選手のみ。「最高の演技をして表彰台に立ちたい」。昨季初めて成功させた4回転ジャンプと高い表現力を武器に、ジュニア屈指の舞台で舞う。(山岸洋介)

 ジュニアGPシリーズは1人2戦まで出場でき、上位6人がジュニアGPファイナルに進む。

 初めて挑んだ昨季は第2戦(チェコ)にのみ出場でき、8位だった。「まさか選ばれないだろうと思っていたので、挑戦しつつ楽しむことがテーマだった」。今季の第2戦(オーストリア)と第5戦(ハンガリー)では、ショートプログラムで初めて「恋愛もの」を、フリーは昨年から取り組むヒップホップを滑る。「昨季より成長した姿を示したい」

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 垣内選手が初めてスケート靴を履いたのは3歳の夏。人見知りの性格を案じた母香里さん(42)が「挑戦する楽しさを知ってほしい」と、レスリングや体操など複数のスポーツの短期教室に通わせ、本人が「続けたい」と望んだのがスケートだった。

 その年の12月からは、練習環境の整った関西大のリンクへ通った。実績豊富な浜田美栄コーチ(当時)に「本気でやるならおいで」と誘われたという。

 順調に上達し、小学4、5年の全日本ノービス選手権では2年連続2位になった。だが優勝を狙った小6の同選手権では演技中に転倒。「重圧がかかり、自分に負けた」。初めて大きな挫折を経験した。

 環境を変えようと、中学入学を控えた2019年春に、地元のひょうご西宮アイスアリーナ(西宮市鳴尾浜1)に拠点を移した。現在は淀粧也香(さやか)、田中刑事の両コーチに教わり、週6日の練習に励んでいる。

 昨季からは日本スケート連盟の強化選手になり、全日本ジュニア選手権で6位に入るなど成長を続ける。現在は4回転トーループの完成度を高め、憧れの高橋大輔さんを目指してステップとスピンを磨く。トリプルアクセル習得も大きな目標だ。

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 周囲から「とにかく真面目で素直」と評される性格で、県連盟の土橋徹理事長は「ここ1、2年の急成長に驚いている。長身で技が映え、バランスもいい」と期待する。

 昨年12月の全日本選手権(21位)では4回転を決め、見せ場の華麗なステップで観客を沸かせた。演技後に初めて浴びたスタンディングオベーションが忘れられないという。

 今年は同アリーナが機器トラブルで7月まで半年間閉鎖されたため、遠方のリンクで細切れの練習を繰り返す不安定な日々を過ごした。けがにも苦しんだが、アリーナ再開とともに徐々に復調している。

 五輪金メダルを目指す成長株は「悔しい経験をするたび、スケートができる幸せを感じる」。ジュニアGPシリーズに向けて「力を出し切りたい」と意気込んでいる。

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