兵庫県の斎藤元彦知事は1日、就任2年に合わせて会見し、県の貯金に当たる財政調整基金が2023年度末に127億円に達する見通しを明らかにした。基金残高が100億円を超えるのは、阪神・淡路大震災前の1994年度以来、29年ぶり。斎藤知事は行財政改革が一定進んだとして、90年代後半から2010年代前半に生まれた「Z世代」の重点支援に意欲を見せた。
現在の残高(約67億円)に、22年度決算で見込まれる約60億円の黒字を積み増す。知事選で掲げた「100億円」の公約達成にめどがつき、斎藤知事は「攻めの県政にかじを切る」と強調した。
Z世代の支援は、今後3年間を集中期間とし、既に実施を決めている県立学校の環境整備のほか、奨学金の返済支援の充実や新婚・子育て世帯向け住宅の提供、不妊治療体制の拡充などを進める。
22年度決算の速報値によると、歳入は2兆6086億円、歳出は2兆5776億円。その差額から翌年度への繰り越し財源などを除いた「実質収支」は60億1200万円の黒字で、21年度の34億1500万円から拡大した。
新型コロナウイルス禍からの企業業績の回復で、県税収入が過去最大の9077億円(前年度比340億円増)になったほか、斎藤知事は「行財政改革も着実に進めた」と説明。県庁再整備や大規模アリーナの計画見直し、海外事務所の整理統合などを例に挙げた。
財政調整基金は94年度に184億円あったが、震災の復旧・復興で激減し、04年度には300万円まで落ち込んだ。斎藤知事の就任前は約33億円に回復していたが、2年間で約94億円を上積みすることになる。
斎藤知事は「県財政はまだまだ厳しく予断は許さないが、少子化や人口減少対策は待ったなしだ」と指摘。Z世代の支援強化について「これから社会に出たり、結婚や出産をしたりする世代への支援が少し薄かった」と背景を語った。県民から意見を聞く「躍動カフェ」や若者との「学生未来会議」も踏まえて、取り組みを具体化させる考えを示した。(田中陽一、金 慶順)