2022年8月、静岡市で消防隊員が死亡したビル火災について「事故調査委員会」が報告書を提出しました。報告書では事故が起きた背景として「安全より効率性を優先する組織の風潮があったのではないか」と指摘しています。
2022年8月、静岡市葵区呉服町で起きたビル火災では、消火活動をしていた駿河消防署の消防士が、火元となった倉庫に1人で入り亡くなりました。
これを受け静岡市は、専門家などで構成する「事故調査委員会」を設置。
関係者から聞き取りを行うなど消火活動について検証を重ねてきました。委員会はこれまで8回開かれ、検証結果や再発防止策が最終報告書にまとめられました。
最終報告には、出火場所の確認のため、建物に入った3人のうち、「死亡した隊員が単独で、筒先を持たずに出火した部屋に入った」ことについて検証しているほか、他の2人の隊員はなぜ死亡した隊員がいなくなったことに気付かなかったのか、また、気付いた後に、なぜすぐに探しだせなかったかなどについて検証しています。報告書では、この中で3人の隊員がロープでつながれていなかったことに触れ、「安全より迅速性、効率性が優先したのではないか」と指摘しています。事故調査委員会は、こうした検証結果をもとに「安全を最優先する組織風土の構築」するべきなど、5項目の再発防止策をまとめました。提言をまとまた中西委員長は…。
(事故調査委員会 中西 美和 委員長)
「一人の隊員が誰も知らない間にいなくなり、火災の現場で亡くなってしまうという活動がなぜ行われていたのか、その背景に注力して、できるだけ広範に情報を収集して委員と議論を重ねてきた、他の消防組織においても他山の石としてこの教訓を生かしてほしい」
報告書を受け取った難波市長は、できるだけ早く対策に取り組みたいと話しました。
(難波市長)
「安全を最優先する組織づくりをやりますというだけではなく、具体的にどう行動することが安全を最優先することなのかというところまで落として確実に実行していくことが大事」
今回の事故調査委員会の報告について、元東京消防庁の坂口隆夫さんは、「安全性への認識が疎かになっていたのでは」と話します。
(元東京消防庁 坂口 隆夫さん)
「屋内進入をするのであれば、目的をしっかり把握して進入してなければいけない、中に逃げ遅れがいない火災現場の場合、安易に進入してはいけない」「火災現場での屋内進入は非常に危険性が伴う、安全第一、安全最優先で活動しなければ今回のような殉職事故に結びついてしまう」
また、今後の再発防止策として「消防局全体での意識の改革が必要」だといいます。
(元東京消防庁 坂口 隆夫さん)
「今は(全国的に)火災件数自体が減ってきている」「延焼火災の現場を経験する人がすくなくなっているのはどの消防本部も同じ、訓練と教育で補わなければいけない、静岡市消防局はもっと訓練と教育を徹底しなければいけないと思う」