長崎・雲仙土砂災害から2年 力を合わせ捜索した11日間 地元消防団・中村さん「地域防災の中核に」

11日間にわたった捜索を振り返る中村さん=雲仙市小浜町雲仙(山下哲嗣撮影)

 民家2棟が全壊し住民3人が亡くなった2021年8月の長崎県雲仙市小浜町雲仙の土砂災害から、13日で2年。降り続く雨に二次災害を警戒しながら、大量の土砂と倒木に阻まれ、行方不明者の捜索は11日間に及んだ。同市消防団小浜支団長、中村有二さん(62)は副支団長として難航した現場にいた。
 「降り過ぎとる」。21年8月12日。前日から雨が降り続き、午後から夜半にかけての雨量は415ミリ。1日で8月平均雨量の1.3倍に上っていた。不安を感じながら寝床に就いた。
 明け方、スマートフォンの着信音で目が覚めた。「雲仙が大変らしい」。別の副支団長からだった。「人の命が関わっていなければいいが」と願った。支団長から緊急召集の連絡が入り、集まった5人で雲仙・小地獄地区に車を走らせた。午前5時ごろだった。
 到着すると、小地獄は知っている風景の跡形もなかった。土砂と倒木ばかり。消防団に加わり30年、初めて災害現場に立ち、驚きで声が出ない。流れ落ちる濁流だろうか、サーッという音が山から聞こえた。
 押し流されたのは民家2棟、行方不明者は一家3人と男性1人と警察、消防から聞いた。
 捜索を始めた。不明者を傷つけないようにスコップを使って土砂を掘り、土砂が入った重いバケツをリレー形式で運び出す。手作業で不明者がいないと分かったら、掘削機で20~30センチずつ慎重に掘り進める。最前線に立ち、掘削機に指示を出した。新型コロナ感染拡大防止のためマスクを着用しており、蒸し暑く息苦しかった。

捜索する中村さん(上方右から2人目)ら=2021年8月23日、雲仙市小浜町雲仙(同市消防団小浜支団提供

 その日のうちに、倒壊した家屋から男性(64)が救助された。3人家族の母親(59)が発見されたが、死亡が確認された。
 雨は断続的に降り続き、足元はぬかるみ、体力が奪われた。心身共につらく感じ始めた捜索5日目の17日、長女(32)が遺体で発見された。「生きていて」という願いは、届かなかった。 まだ父親(67)が見つかっていない。18日から小浜以外の支団も現場に入った。「遺族に1日でも早くお返ししよう」。団員に声をかけ続けた。
 捜索11日目の23日。「(不明一家の)ピアノが出た」という連絡がスマホに入った。周囲に父親がいるかもしれない。緊張しながら作業に集中した。
 「髪の毛発見」。午後3時ごろ。目の前の警察官の声が聞こえた。父親が土砂の中から発見された。
 「見つけられないのではという焦りと『なんとかしたい』という思いがずっとあった。家族3人そろったと分かり、ほっとした」。発見された後は警察と消防に場所を譲り、離れた場所から見守った。 解散式が終わり、現場で消防団仲間に声をかけ、ねぎらった。残念ながら土砂に流された4人のうち3人が亡くなった。ただ全員を捜し出せた。お互い言葉に詰まり、目を潤ませていた。団結して地元のために役立つという消防団の役割を実感した。
 今年も各地で大雨の犠牲者が出ている。「現場の大変さは手に取るように分かる」と中村さんは胸を痛める。あの11日間を経験し、「警察、消防、自衛隊など出会った人全員に感謝したい。力を合わせたからこそ救出という目標を達成できた」と振り返る。仲間たちとの結束を誇りに「地域防災の中核になりたい」。あらためてそう誓う。

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