双日および九州電力とフランス電力(EDF)などのコンソーシアム(企業連合)が、ベトナム南部ビントゥアン省での液化天然ガス(LNG)火力発電所整備の最終投資決定(FID)に向けて調査を続けていることが分かった。事業規模は3,000億円規模に上るとみられる。発電所に輸入LNGを供給するターミナルの整備事業は米エネルギー大手AESグループが7月に投資計画の承認を受けており、コンソーシアムはターミナルの稼働に合わせて早ければ2027年にも発電所を稼働する目標だ。
事業化調査は、BOT(建設、運営、譲渡)方式によるソンミー第1火力発電所の整備事業が対象で、同発電所はハムタン郡ソンミー第1工業団地内で計画されている輸入ターミナルと第1および第2発電所の3件のLNG関連プロジェクトの一部。発電容量は225万キロワットを予定する。
双日によれば、着工は25年ごろ、完成は27~28年を見込む。BOTの契約期間は運転開始から20年間。コンソーシアムの持ち分比率はEDFが37.5%、地場建設大手パシフィック(タイビンズオングループ)が25%、双日と九電が18.75%ずつ。ダウトゥ電子版は21年に、事業規模を48兆ドン(20億2,000万米ドル、約2,920億円)前後と報じている。
■ターミナルはAESが整備
ソンミー第1は、16年3月に改定された20年までの電力開発の指針「第7次国家電力開発基本計画(改定PDP7)」に盛り込まれた。今年5月に承認された第8次PDPにも引き継がれている。
コンソーシアムは21年10月に商工省による承認を受けて事業化調査を進めてきた。発電所にLNGを供給する輸入ターミナルの投資方針が7月に承認を受けたことで、ソンミー第1の最終投資決定に向けた周辺環境は整いつつある。
ターミナルは国営ベトナム石油ガスグループ(ペトロベトナム)傘下のペトロベトナムガス(PVガス)と米エネルギー大手AESグループが13億3,000万米ドルを投じて整備する。第1期の処理能力は年間360万トンで、ソンミー第1の稼働に合わせて28年までに運用を始める計画だ。AESは2月に、ソンミー第2(発電容量225万キロワット)のBOT方式による投資認可も受けている。
コンソーシアムは事業化調査の承認取得後、ベトナム電力グループ(EVN)への電力供給契約(PPA)などの交渉に入る。
21年6月のダウトゥ電子版によれば、コンソーシアム側は、発電した電力をEVNが購入することを保証する「テイク・オア・ペイ条項」をPPAに盛り込むことを求めたとされる。コンソーシアムが得る利益の外貨兌換(だかん)に対する政府保証も要請したという。いずれも外資による発電所への投資交渉で争点になってきた条件で、着工に向けて曲折も予想される。
■日本企業、商機伺う
LNGは燃焼時の温室効果ガスの排出量が石炭に比べると少なく、ベトナム政府は国際公約とする50年のカーボンニュートラル(炭素中立)実現に向けた過渡的な電源として活用する方針を打ち出している。PDP8は、30年時点でLNG火力が総発電容量に占める比率を現在のゼロから14.9%に高める計画を示しており、外資が参入機会をうかがっている。
日本企業では、東京ガスと丸紅が北部クアンニン省でLNG火力発電所とターミナルの整備事業に参画している。発電所は27年後半の商業運転を目指している。東京電力ホールディングスと中部電力が出資する発電事業会社JERA(ジェラ)と地場ソビコ・グループのコンソーシアムは7月、ニソンLNG火力(北中部タインホア省)の実施計画案を省人民委員会に提出している。石油資源開発(JAPEX)も北部ハイフォン市でターミナル建設事業を進めている。