ウルトラマンAの願い

 等身大の怪獣「ベムスター」や超獣「バラバ」の迫力に胸がドキドキする。諫早市美術・歴史館で開催中の「ウルトラ空想特撮ワールド」展(9月24日まで)。テレビのウルトラマンや怪獣に夢中だった子どものころを思い出した▲会場には、あの名ぜりふが展示されていた。「やさしさを失わないでくれ。弱い者をいたわり、互いに助け合い、どこの国の人たちとも友だちになろうとする気持ちを失わないでくれ。たとえ、その気持ちが何百回裏切られようと…それが、私の、最後の願いだ」▲1973年放送のウルトラマンA(エース)の最終回で、地球を去るエースが子どもたちに託した願いだ。誰もがエースの願い通りならば戦争など起こらないのに▲脚本を書いたのは諫早市出身の故市川森一さん。この最終回は66年の「快獣ブースカ」から手がけてきた子ども向け特撮ドラマの「卒業作」だった▲市川さんはこう語った。子どもの視聴者はいずれ大人になり、ウルトラシリーズを思い起こす時期が来る。だから物語には強いメッセージが必要なのだ、と▲エースの願いは市川さんが未来の大人たちに託したメッセージだった。かつての「ウルトラ少年」たちはウルトラマンの勇敢さとともに、エースの美しい言葉も子どもたちに伝え続けなければなるまい。(潤)

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