和牛の魅力、和装でPR 海外で肉切り“ブッチャー”実演の渡邊麻莉夏さん「多彩な調理法伝えたい」

海外に和牛の多彩な魅力をPRするため、着物姿で肉をさばく渡邊麻莉夏さん=姫路市内

 着物姿で神戸ビーフなどの牛肉をさばき、海外の料理人らに和牛の魅力を伝える女性が姫路市にいる。「和牛着物ブッチャー(肉職人)」の名で、アジアや欧州を巡る渡邊麻莉夏さん(29)=同市=だ。昨年夏に活動を始め、これまでに約30都市を訪問。モモやウデなど海外でまだ関心が低い部位のカットを実演し、多彩な調理法も提案して和牛の輸出増を図る。(田中宏樹)

 渡邊さんは横浜市出身。大学時代にアルバイトした肉料理専門のビストロで精肉加工に携わり、肉職人を志した。肉の生産や調理などの知識を深め、民間の検定試験にも合格。大学卒業後も自作の名刺を手に、東京都内の焼き肉店や肉バルを巡って人脈を広げた。

 2018年12月からは東京・築地場外市場の肉の加工場で職人の見習いとして勤務。19年夏に首のけがで精肉加工の現場を離れたが、職人を目指す思いは消えなかった。

 人脈を生かし、22年8月に食肉加工卸エスフーズ(西宮市)の関連会社に入社。海外への牛肉の売り込みを任され、日本文化を伝えられる着物姿でのスタイルを確立した。エスフーズの取引先などが海外のホテルやレストランで開く和牛の販促会で、10キロほどの肉の塊を手際よく切り分ける。

 販促会では海外で人気のヒレやサーロインは使わず、肩ロースなど「セカンダリ」と呼ばれる部位をあえてPRする。「カットで余った端材や、取り除いたすじ肉をどう料理できるかも伝えている」と渡邊さん。煮込み料理やハンバーガー、タコスなど多彩な調理法を紹介し、和牛の幅広い魅力を伝える。

 日本にいる間は食肉処理施設「和牛マスター食肉センター」(姫路市東郷町)を拠点に、農家の元へも足を運び生産者と交流する。9月以降はドイツや米国などを訪れる予定といい、「セカンダリも含めた和牛の素晴らしさを海外で発信し、輸入増に貢献していきたい」と力を込めた。

© 株式会社神戸新聞社