京都最大「果物産地」のスイーツ売り上げ好調 集客力抜群のイベントが寄与

直売所に設けられたコーナーで、梨を使ったスムージーなどのスイーツを味わう来店客(京丹後市久美浜町・いえき農園)

 京都府内最大の果物産地・京丹後市で、7月から10月末ごろまで催されるイベント「京丹後フルーツトレイル」が5周年を迎えた。旬の果物を使ったスイーツを果樹園の直売所や道の駅、カフェで販売する取り組みで、若い世代を中心に関心を呼び、売り上げが伸びている。一方で、果物の産地としての認知度向上やさらなる消費増に向け、参加事業者の拡大が課題となっている。

 9月上旬、「いえき農園」(同市久美浜町)の直売所には観光客が詰めかけていた。家族で訪れた滋賀県竜王町の会社員尾川弘祐さん(30)は梨のスムージー(1杯500円)を注文し、「京丹後が果物産地とは知らなかった。新鮮でおいしい」と味わった。経営する家城俊昭さん(51)は「若者客が増えた。スムージーやパフェを味わって気に入った果物を買い、他の果樹園直売所に向かう客も多い」と喜ぶ。

 府によると、市内の果樹栽培面積は、ナシとモモ、ブドウに限っても、府内の全果樹栽培面積のうち約12%(2016年)を占め、最も多い。スイカやメロン、イチゴも栽培され、時季ごとの果実を味わえる。網野町~久美浜町の国道沿いは約20カ所の直売所が並び、「フルーツ街道」と呼ばれる。

 しかし、果物の販売量は全国的に減少傾向にある。総務省の家計調査によると、生鮮果実の年間1人当たりの購入量は2018年に23.9キロと、20年前より23%減少した。

 こうした背景を受け、消費拡大の取り組みとしてスタートしたのがフルーツトレイルで、市はスムージーの調理器具などを購入する補助制度を18~20年度に設けた。初年度(18年度)は果樹農家2カ所と道の駅1カ所が始め、19年にカフェ1カ所、20年に果樹農家1カ所が加わった。

 事業をとりまとめる農産物仲卸ベンチャー「田園紳士」(久美浜町)社長森下裕之さん(41)は「果物を購入する中心世代が高齢化し、記念日に果物を贈る習慣も薄れてきた。将来的に観光客数や売り上げが減少する危機感があった」と話す。

 森下さんによると、全体で20年はスムージーが6788杯(18年比2.8倍)売れ、売り上げは342万円8千円(同2.9倍)と開始時期の約3倍増となり、その後も好調に推移している。特にカップルや親子連れが増えたといい、「果物産地の京丹後を若い世代に広める目的は果たせた」と胸を張る。

参加農家増に課題

 一方で、京丹後市内には約60軒の果樹生産農家があるが、参加数は増えていない。森下さんはトレイル期間と収穫繁忙期が重なり、人手が足りなくなる時期的な事情に触れながらも、「トレイルの趣旨に賛同する果樹農家が1軒でも増えて、京丹後産果物の付加価値向上につながれば」と期待する。

 市商工観光部長として取り組みの具体化に関わった市観光公社の木村嘉充専務理事(64)は「農家が加工や販売まで関わることで、消費拡大につなげたい。飲食店や宿泊施設も参加し、京丹後産フルーツをより多くの観光客に提供する体制づくりも重要」と指摘する。

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