最高裁が手術要件を違憲と判断、福井県内トランスジェンダーの声 性別変更巡る決定に歓迎と懸念

 性同一性障害の人の性別変更を巡り、生殖能力をなくす手術を要件とする特例法の規定を違憲と判断した最高裁の決定に対し、心と体の性が一致しない福井県内のトランスジェンダーは10月25日、「(戸籍変更という)選択肢が広がる可能性がある」と歓迎した。一方で当事者に対するヘイトスピーチを懸念する声も聞かれた。

⇒戸籍の性別変更、手術要件は違憲と最高裁大法廷

 トランスジェンダーの山口初さん(65)=福井市=は「今後、手術をしなくても性別変更できる可能性がある。全ての当事者が性別変更を求めているわけではないが、選択肢が増えることはとても喜ばしい」と話した。県内でも同性カップルなどの関係を自治体が公的に認める「パートナーシップ宣誓制度」の導入が増えている状況を踏まえ、「LGBTQ(性的少数者)が社会に受け入れられつつあるという変化を感じる」と受け止めた。

 県内の別のトランスジェンダーは、「手術要件は人権侵害」とした上で「戸籍を変えたい人たちは、お金をためて、外国で手術を受けている。同性のパートナーと結婚したいと思っている人もいる。そういう人たちは救われる」と述べた。

 6月に性的少数者への理解増進法が成立した際、「女性を自称すれば、男性も女湯や女性トイレに入れる恐れがある」といった言説が広まった。このトランジェンダーは「理解増進法はあくまで理念法なのに、政治家までもが誤った認識で発言していた」と指摘。今回の最高裁判断でも「当事者に対するヘイトスピーチがインターネット上などにあふれ、犯罪者のような扱いをされる可能性がある」と危惧する。「私たちは多様な性を認めてほしいだけ。市民には正しく理解してほしい」と訴えた。

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 性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更する場合、生殖能力をなくす手術を事実上求める性同一性障害特例法の規定(生殖能力要件)が憲法に反するかどうかが争われた家事審判で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は10月25日、規定を違憲、無効とする決定を出した。

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