里親等委託率、6年ぶりに2割超える 登録里親は366組で最多 全国平均や目標値には届かず

 さまざまな事情で親元での生活が困難な子どもを家庭的な環境で養育する里親制度で、栃木県の2022年度(3月末時点)の里親等委託率は前年度比1.8ポイント増の21.1%となり、6年ぶりに2割を超えたことが5日までに、県のまとめで分かった。23年度(4月1日時点)の県内の登録里親数も31組増の366組で最多を更新。21年10月開設の里親養育支援機関「栃木フォスタリングセンター」(宇都宮市)の勧誘活動や研修の拡充が奏功した。一方、委託率は全国平均や県の目標値には届いておらず、さらなる改善が課題となっている。

 県こども政策課によると、児童養護施設や里親などによる社会的養護を必要とする要保護児童は、今年3月末時点で県内に603人いる。このうち里親家庭で暮らすのは116人、ファミリーホームは11人で計127人にとどまるのが現状だ。

 子どもの健全育成には、特定の大人と愛着関係を育むことが重要とされる。国や各自治体が里親制度の推進に力を入れる中、県内の里親等委託率は14年度末が21.3%で最も高く、18年度以降は19%台が続いた。一方、22年度は過去2番目となる21.1%に増えた。

 背景には同センターの包括的な里親養育支援がある。同センターは制度説明会の実施や研修の休日開催など工夫を続け、里親希望者や制度に関心のある人が参加しやすい環境を整備した。

 21年4月に299組だった里親登録数は22年4月は335組、23年4月には366組に増加。子どもを養育する委託里親数は同月時点で99組、委託児童数は114人でいずれも最多となっている。

 湯澤典子(ゆざわのりこ)センター長は「開所前から高まりつつあった里親推進の機運に、弾みを付けることができた」と振り返る。

 一方、委託率の全国平均は21年度、23.5%だったが、本県は4.2ポイント下回る19.3%だった。

 また県が掲げる委託率の目標値とも開きがある。県は社会的養育推進計画の中で、例えば「3歳未満」の委託率を24年度に53.1%へ引き上げる目標を掲げるが、現状は22.4%(22年度時点)にとどまっている。

 同課の担当者は新たな里親登録者が増える中、「養育経験のない里親が、虐待を受けた経験など複雑な背景がある子どもを預かるまでには時間がかかる」との課題も指摘する。湯澤センター長は「相談対応や家庭訪問など細やかな支援で養育に伴走し、里親制度を下支えしたい」としている。

ズーム

里親等委託率 社会的養護が必要な要保護児童のうち、里親やファミリーホームに預けられている子どもの割合を指す。県が社会的養育推進計画で掲げる委託率の目標値は、2024年度に3歳未満53.1%、26年度に3歳以上就学前54.4%、29年度に学童期以降41%としている。

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