小国の水力発電計画が中止 県企業局「採算性確保できず」

 県企業局は6日、2030年の運転開始を目指し、小国町で進めていた水力発電所の建設事業を中止すると発表した。資材高騰などの影響で事業費が当初の約80億円から約130億円に膨らむ見通しとなり、採算性が確保できないと判断した。これまで設計や地質調査などに約5億円を投じていた。企業局の事業化された発電所建設が中止となるのは初めて。

 企業局15番目の水力発電所として20年度に事業化が決まった。小国町役場から東側に約8キロの同町綱木箱口に発電所を建設し、直線で北東に約3キロ上流の明沢川から取水し、導水路トンネルや水圧管を整備する計画だった。最大出力は4100キロワット、一般家庭約4600世帯の年間消費量を供給できる見込みだった。

 企業局によると、県は21年度にコンサルティング会社に実施設計の作成を委託した。固定価格買取(FIT)制度の駆け込み需要で、設備メーカーからコンサル会社への見積もり提出が遅れ、実施設計は先月になってようやく完成し、大幅な増額が判明した。

 増額の要因は▽建設資材や労務単価の高騰(約25億円)▽軟弱地盤のため水圧管ルートの変更(約6億円)▽掘削工法・方法など工事内容の見直し(約19億円)―としている。

 これまでに要した経費は事業化決定前の基本設計や地質調査などに約2億8600万円、事業化決定後の実施設計や工事用道路、跨線(こせん)橋の設計などに約2億2500万円。同日の県議会運営委員会で沼沢好徳企業管理者が経緯を説明し、事業を継続した場合、「運転開始後、53年度までの間に9回ほど電気事業が赤字となる」と中止への理解を求めた。

 企業局は現在、米沢市赤崩地区丹南地点で最上川の砂防堰堤(えんてい)を利用した水力発電の可能性調査を進めており、今後、事業化の可否を検討する。

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