今回の取材、まずは防護服を着るところから始まりました。
(大石アンカーマン)
「(防護服を着ると)守られている感じがしますね。一気に安心感が」
養蜂箱に近づくと…
(大石アンカーマン)
「あ、飛んでますね。いるいる、ミツバチがいるよここに。止まってます。この中に巣があるわけですか」
愛知県西尾市の養蜂家、羽佐田祥介さん。
この養蜂場だけでも、約40万匹のミツバチを飼育しています。
箱を開けると…
(大石アンカーマン)
「うわわわ、これ見てこれ、すごいな…」
(養蜂家 羽佐田祥介さん)
「女王バチがこれ。この少し大きめなのが女王バチ」
(養蜂家 羽佐田祥介さん)
「この部分にミツが入っている」
(大石アンカーマン)
「光ってる光ってる。奥の方が光ってますが、これがミツなんですね」
ミツバチが集めたミツを全て商品にするわけではない
今の時期集まるのは、黄色い花でお馴染みの外来植物セイタカアワダチソウの蜜。
強い繁殖力で駆除が難しい要注意外来種ですが、ハチにとっては冬に入る前の貴重な“蜜源”です。
(大石アンカーマン)
「美味しそう、とろとろですね。いただきます。甘い。甘いけど濃厚というよりさらっとした甘味ですね」
(養蜂家 羽佐田祥介さん)
「少しくせはあるんですけど」
(大石アンカーマン)
「いや、おいしいです」
ハチたちが生きるのに必要な分は残し、いわばおすそ分けをハチミツとして出荷します。
(大石アンカーマン)
「すべてが商品になるわけではないんですね」
(養蜂家 羽佐田祥介さん)
「本来であれば(ミツバチが)自分たちが食べるために集めていて、その余剰の分を私たちがいただいている。それ以上にとってしまうとミツバチ自体が死んでしまうので調整する」
全てはミツバチのおかげ…と、そこに!
(箱をたたく羽佐田さん)
(大石アンカーマン)
「ちょっと今何ですか。あー!これスズメバチ? 5センチくらいありますね」
ミツバチの天敵オオスズメバチが巣に来たため、叩いて駆除しましたが…
(養蜂家 羽佐田祥介さん)
「ちょっといま巣を叩いたからミツバチが怒った。姿勢を低くしてやりすごしてください」
驚いたミツバチが一斉に外へ…それでもスズメバチのように襲ってくるようなことはありません。羽佐田さんは、煙を吹きかけてミツバチを落ち着かせました。
ここ数年ミツバチが減少 ことしは半分に
20年以上、ミツバチで生計を立てている羽佐田さん。
しかしここ数年、“ミツバチが減っている”と感じています。
(養蜂家 羽佐田祥介さん)
「特にことしは夏の生育が悪かった。ことしでいうと半分まで(減った)」
(大石アンカーマン)
「ここまで減った理由、一番は何だと思いますか」
(養蜂家 羽佐田祥介さん)
「ことしは“ミツバチヘギイタダニ”が全国的に大量発生しているのと、夏が暑すぎた」
ミツバチにつくダニや、猛暑が原因とみていますが、去年に比べて半分にまで減ったといいます。
(養蜂家 羽佐田祥介さん)
「ハチミツをとるにはミツバチに頑張ってもらわないといけないんですが、そのミツバチが近年、生育しにくい環境下に置かれている」
ミツバチの減少は人間や自然に深刻な影響が
【中部大学の研究室】
農作物などを研究している、中部大学の吉村和也教授。
ミツバチが突如激減した十数年前に比べると今は落ち着いていると言いますが、ミツバチの減少は、「人間や地球に深刻な影響を与える」と指摘します。
(中部大学 吉村和也教授)
「温暖化して気温が上がると植物の稔性(ねんせい)、受精の効率が下がる。その過程で花粉が減り、ミツバチの食料源が減る。逆に温度が上がるとダニが一般的に生育しやすくなる」
「もともとミツバチは自然界の植物の交配を手助けする役割をしていますので、(ミツバチの減少は)自然の減少や生物多様性の低下をもたらす可能性がある」
世界の農作物の3分の1はミツバチのおかげで出来ている
【西尾市 イチゴのビニールハウス】
(大石アンカーマン)
「ほら(ミツバチが)いるよ。今は何をしている?」
(養蜂家 羽佐田祥介さん)
「イチゴの花の花粉と少しだけある蜜を、ミツバチがなめに来る」
ハチミツをとるだけでなく、ミツバチを農家へ貸し出す仕事もしている羽佐田さん。ミツバチや受粉の状態を確認しに来ることもあります。
(養蜂家 羽佐田祥介さん)
「ミツバチは花の周りをぐるっと回る習性がある。それでイチゴの受粉がきれいにできて形のいいイチゴができる」
多くの農家が、実を付けるための受粉をすべてミツバチに頼っています。人工授粉ではコストがかかりすぎ、農業が成り立たないからです。
国連食糧農業機関によると、「世界の農作物の3分の1はミツバチのおかげで出来ている」ということです。
(養蜂家 羽佐田祥介さん)
「こちらは、ミカンの花のミツがたくさん含まれているハチミツ」
(大石アンカーマン)
「おいしそう、いただきます。あ~、おいしい。本来のハチミツの味がして、最後、後味でミカンを感じる」
このまま、ミツバチが減り続けたらどうなるのか。
かのアインシュタインは「ミツバチがいなくなったら、人類は4年で滅びる」と語ったと言われています。
(養蜂家 羽佐田祥介さん)
「ミツバチが人間の食料を担っている部分がかなり大きいので、予想ではなくて現実に起こりうることじゃないかな。(ミツバチと人間は)切っても切り離せない関係」
小さくて大きな存在…ミツバチの保護に、人類の将来がかかっていると言っても決して大げさではないのです。
2023年11月16日放送 CBCテレビ「チャント!」より