人口減りゆく福井市…子育て環境「これで十分とは思わない」 施設や相談場所の拡充求める母親たち

多くの親子が利用する福井市地域子育て支援センターぱんだルーム=福井県福井市木田1丁目

 核家族化が進み、地域社会から孤立しがちな子育て中の親子の居場所として福井県福井市が運営する「地域子育て支援センター」。同市木田1丁目のぱんだルームに母親らが続々と訪れ、子育ての悩みを相談し合ったり、子どもをおもちゃで遊ばせたりしている。悩みの中には、子育て環境への不安や不満の声も聞こえてくる。

 同センターは、市内に11カ所あり市直営と民間委託しているスーパーなどの併設施設の2形態がある。保育士らが支援員として常駐し、悩みの相談にも対応。4歳未満の子どもが無料で利用できる。

 2022年度の述べ利用者数は7万4335人。19年度は12万3800人だったが、新型コロナウイルス感染拡大で利用を制限するなどしたため一時は半減。現在も安全面を考慮し、各センターの規模に応じて定員を設定しているが、需要は高い。ぱんだルームの支援員は「コロナ前と変わらず利用希望者は多いが、せっかく来ても定員いっぱいで帰ってもらうこともある」という。

 よく利用するという30代の女性は「子どもの成長について不安なことが多いが、相談できる機会が少ない」と悩みを漏らす。センター自体の数や子どもを連れて対面で相談できる場所の拡充などを訴える。市は産後1年までの母子を対象にケア事業を展開しているが「利用の審査条件が厳しく、もっと気軽に利用できれば安心して子育てできるのに」と利用しやすい支援体制を求める母親もいた。

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 国勢調査によると福井市の人口は1995年の27万2970人が最多で、以降は減少傾向が続く。住民基本台帳などに基づく市統計書では、2009年から死亡数が出生数を上回り、22年には死亡数が1500人以上超過した。出生数は多少の増減はあるが緩やかに減少し、ピーク時の半分以下となった。

 女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」はここ10年ほど1.5以上で推移。全国平均よりは高いが、市総合戦略の目標値1.8程度にはまだ遠いのが現状だ。

 同市の子育て環境について母親たちは「これで十分とは思わない」と指摘する。市は24年度から「こども家庭センター」を開設し妊娠から子育てまで相談でき、支援につなぐ体制を整える。母親らの声を吸い上げ、安心して子育てができるまちづくりをいかに進めるかが問われている。

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 「夫の休日に、子どもを連れてどこに遊びに行くか悩む」と話す女性(34)は「市内に体を動かして遊べる民間の屋内施設は複数あるが公的施設は少ない。降雪、雨天時なども屋内で安心して遊べる場所があれば」と訴える。

 市は市中央公園に全天候型遊び場の整備を計画。大型の屋根の下にトランポリンや滑り台、保護者が見守れるスペースがあり、来年秋ごろの完成を目指している。整備について市公園課は「中央公園の自然、風を感じながら遊べる施設として設計した」とする。

 他市町も既存建物の改修や新築などで屋内型の遊び場整備を進める。福井市の施設が季節の寒暖や天候に左右されずに利用できるようになるのか。母親たちから充実した施設の整備を求める声が聞かれた。

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