岩佐歩夢の走りとコミュニケーション力は期待以上「“良い・悪い”をハッキリ言ってくれる」と田中監督

 2024年の全日本スーパーフォーミュラ選手権にTEAM MUGENから参戦する岩佐歩夢。12月6日〜8日に鈴鹿サーキットで行われた合同/ルーキーテストでは、早くもレギュラードライバーたちに匹敵するタイムを記録し、TEAM MUGENの田中洋克監督も「期待以上でした」と、彼のパフォーマンスを高く評価した。

■コメント能力は「ローソン以上」

 2023シーズンはFIA F2に参戦しランキング4位を獲得した岩佐は、レッドブルジュニアドライバーとして来季はスーパーフォーミュラにフル参戦することが、すでに発表されている。

 スーパーフォーミュラのマシンについては、12月3日に行われたホンダレーシングサンクスデーでのデモランという形で初ドライブを経験した上で、鈴鹿での合同テストに臨んだ。その状態ながら1日目午前のセッション1ではトップから0.468秒差の5番手につけるなど、ルーキーとは思えない走りを披露した。

 2日目午後のセッション4ではデグナーふたつ目でクラッシュを喫し、そのセッションはほとんど走ることができなかったものの、ルーキードライバーのみが参加した3日目のセッションでは1分36秒387のベストタイムをマークした。

 岩佐の仕事ぶりを間近で見た田中監督は「期待以上でしたね」と驚きの表情をみせた。

「最初の走り出しの時点でトップ10に入っていましたし、2日目にクラッシュはしましたけど、それ以外はちゃんとメニューをこなしていました。初日は習熟走行がメインになるかなと思っていましたけど、セッティングまでやり始めていました。(レギュラー陣と)遜色ない走りをしています」

「2日目の午後はクラッシュがあったので、最初に出したタイムであの順位(13番手)でしたけど、仮にみんなと同じタイミングに新品タイヤでアタックをしていたら、トップ3に近いところはいっていたのではないかなと思います」と、田中監督は終始感心しっぱなしの様子だった。

 加えて田中監督が強調したのは、岩佐のフィードバック時のコメント能力だ。

「コメントもすごく的確で分かりやすいですし、リアム(・ローソン。2023シーズンに参戦)の時とあまり変わらないというか、それ以上ですね。彼は鈴鹿を走り慣れていますからね。クルマの動きを敏感に感じていて、それをうまく表現してエンジニアに伝える……という部分は、聞いていても上手だなと思います」

「野尻(智紀)とは(求めている)セットが違うなという雰囲気は見ていて感じますし、その中でもけっこう的確にコメントしてくれます。セットを変更したら変わった部分に対してもしっかりと反応してくれます」

「何より(岩佐は)“良い・悪い”をハッキリ言ってくれます。周りの意見に流されずに、まずは自分の意見を言って、それが合っているかどうかはデータと照らし合わせて検証していきますけど、すごく上手ですね」

「あとはテスト前に、工場に来てエンジニアとコミュニケーションをとりたいという要望が岩佐からありました。セッションの合間もエンジニアとしっかり話し合っていて、コミュニケーションをとるのも上手です」

2023スーパーフォーミュラ合同/ルーキーテスト 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)

■「久しぶりの鈴鹿で西日にやられて」クラッシュ

 一方で岩佐の方も、TEAM MUGENのオープンなやり方と、F2との違いについては新鮮に感じている様子だった。

「チーム内で2台が分かれるということがまったくないです」と岩佐。

「ドライバー間のコミュニケーションはもちろん、エンジニア間についてもそうで、たとえば野尻さんのエンジニアともコミュニケーションがとれます。チーム内ではすべてがオープンです。だからクルマのパフォーマンスが2台とも良いのかな、というのはすぐに感じました」

 来季はチームメイトとなる野尻も、包み隠さずに何でも教えてくれるという。

「野尻さんもすべてをオープンにしてくれて、僕が聞いたことに対しても、いろいろとアドバイスをくださいますし、僕が悩んでいる時があったら気にかけてくれます。本当にチームとして強くなって『ワン・ツーをとろう!』という感じなので、僕としてもやりがいはあります。僕としても、その方向でやりたいなという気持ちが強くなりました」

 2日目のセッション4では、デグナーカーブでコースオフを喫し、スポンジバリアにクラッシュした岩佐は「久しぶりの鈴鹿で西日にやられてしまって、ひとつ目の縁石に乗り上げてしまいました」と、当時の状況を振り返る。

 これにより、ほぼ1セッションを走れずに終わったことで、テストメニューにも影響が及んだ。3日目に予定していた1号車でのドライブもなくなってしまった。それでも「初歩的なミスでしたけど、良い刺激になりました」と岩佐。

「2日目の午後で走れる時間を減らしてしまったところはありましたけど、トータルで考えると想像以上の結果が得られたなというところはあると思います。3日目はショートランとロングランに分けてテストを行いましたけど、かなり良いデータがとれたので、来年に向けてはポジティブです」と、手応えを感じている様子だった。

 見た目上ではヨーロッパのレースに挑戦していた岩佐が日本に帰ってくるというイメージになりがちだが、あくまで来季はレッドブルジュニアドライバーとしてのプログラムの一環で、スーパーフォーミュラに参戦することとなる。

「F1の方のプログラムになるので、来年は基本的にイギリスをベースにすることになると思います」と岩佐。2023年のローソンと同じように、レース前に来日してチームとのミーティングなど、準備を進めていくという流れになりそうだ。

2023スーパーフォーミュラ合同/ルーキーテスト 岩佐歩夢(TEAM MUGEN)

© 株式会社三栄