【ささやか事件簿】またもカメラが趣味になったドライバーがひとり。牧野任祐にハマり度を聞いた

 コンマ1秒を争い、日々サーキットで驚くべきテクニックをみせてくれるレーシングドライバーたち。その戦うさま、そして疾走するレーシングカーの姿の写真を撮ることは、難しさも相まって多くの愛好者がいる。カメラはモータースポーツと切っても切れない関係にはあるだろう。そんな関係の深さもあるのか、近年は逆に、レーシングドライバーのなかにもカメラが趣味になっているドライバーが増えている。今回、新たに“カメラ沼”にハマりはじめた牧野任祐に、そのハマり具合を直撃した。

 レーシングドライバーのなかには、近年カメラが趣味のドライバーが何名かいる。ファンの皆さんにとってもカメラはサーキットでの観戦のお供で、日々研究している……という方も多いと思うが、筆者も日本レース写真家協会(JRPA)会員の端くれとしては、カメラを趣味としてくれるドライバーが増えてくれるのは嬉しい限りだ。

 有名なカメラ好きドライバーと言えば、中嶋一貴の風景写真撮影にはオートスポーツ本誌も同行させてもらったことがある。さらに、実際にサーキットで走行写真も含めて撮影も行っているのは国本雄資。現在もスーパーGTの搬入日にあたる金曜日には、カメラ片手にしばしば撮影を行っている。

 また近年では、InstagramなどSNSで写真を発表しているドライバーもおり、今季スーパーGT、スーパーフォーミュラでダブルタイトルを獲得した宮田莉朋も、プライベートの時間をライカで切り取りSNSに掲載している。また、GT300等で活躍する平中克幸や山内英輝、篠原拓朗もカメラ好きだ。

 そんなカメラ好きドライバーに、新たに加わった(?)のがスーパーGT、スーパーフォーミュラで活躍する牧野任祐。どれくらいハマっているのか、スーパーフォーミュラ合同テスト/ルーキーテストの時に聞いてみると「ゲロはまりです。(自分で)ビビるくらいです」と言うから余程だろう。被写体は「人、風景です。でも人の方が今は多いですね」という。

 なぜカメラにハマったのかを聞くと、「前からカメラをやりたいと思っていたんですよ。でも買おう、買おうと思ってタイミングがなくて」と牧野。そんななか「(篠原)拓朗と話をしていて『撮りに行こうよ』という話になったんです。それでカメラを買って、拓朗と、田村翔さん(プロフェッショナルレーシングフォトグラファー。JRPA会員)に教えてもらって始めました。何事も最初は先生が大事ですから」と撮影を始めた結果、今に至る。

 先述のとおり、筆者は以前から篠原に「カメラにハマってる」という話をされたことがあり、作品もいくつか見せてもらったことがある。篠原が撮るのは夜景など風景写真で、こちらもかなりハイセンス。ふたりの“先生”を得て写真を始めた牧野だが、現在は撮影が楽しくて仕方ないよう。

「機材はソニーのα7 IVです。Gレンズも買っちゃいました。50mmの単焦点で撮ってます」と“機材沼”にもハマりはじめている牧野。インタープロトやスーパー耐久などでも身近なドライバーを撮っているとか。筆者もいくつか写真を拝見したが、単焦点の美しいボケ具合が活かされており、プロ顔負け。JRPAの端くれとしては困ったものだ(ワタクシ編集出身の自己流なので人物は苦手)。

「グリッドでは撮ってるんですが、流し撮りはまだその段階に至ってなくて。でもめちゃくちゃ楽しいです」と嬉しそうに語ってくれた牧野。レーシングドライバーはその競技の流れ、その競技における“カッコ良さ”を熟知していることもあり、やはり写真の上達は早い。筆者も負けないように頑張らなければ仕事がなくなる! と焦りを覚えた鈴鹿の夜だった……という話でした。

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