テレビ、映画から「忠臣蔵」なぜ消えた? 時代劇研究家の春日さん、兵庫の赤穂で語る「今の時代でも面白くできる」

忠臣蔵グッズを身に付けて講演した時代劇研究家の春日太一さん=赤穂市加里屋中洲3

■制作側の資金力低下を嘆く

 時代劇研究家、春日太一さん(46)の講演「映画会社やテレビ局はなぜ『忠臣蔵』を作らなくなったのか」が、兵庫県の赤穂市民会館(同市加里屋中洲3)であった。春日さんは、忠臣蔵作品が作られなくなった理由について、制作側の資金力低下が理由と指摘。その上で「今の時代でも面白い作品はつくれる」と訴えた。

 忠臣蔵の普及啓発を目指す「赤穂義士会」の主催。春日さんは東京出身で時代劇や映画、テレビドラマの変遷を研究し、「忠臣蔵入門」「大河ドラマの黄金時代」などの著書がある。講演会には、市民ら約100人が参加した。

 忠臣蔵の認知度の低下は、同市でも課題となっている。春日さんによると、パロディーを除く本格的な忠臣蔵作品は、映画で1994年、テレビで2010年以降作られていない。

■大人気俳優に期待

 インターネット上などで広まる新説の存在や、忠義心についての世代間の受け止め方の違いなどがその要因として指摘されるが、春日さんは「60年前から同様の議論はあった」と否定。「スター俳優を集め、一大プロジェクトとして制作してきた映画会社やテレビ局の現場の資金力低下が理由だ」と強調した。

 忠臣蔵の魅力は、一人の死に始まる濃厚な人間ドラマなどで「必ずしも忠君の美学が愛されていた訳ではない。今でもエンターテインメントとして楽しめる」と言及。時代劇の人気が低迷する中、「もう一度NHKの大河ドラマに期待するか、大人気俳優に『大石内蔵助を演じたい』と言ってもらう他はない」と論じた。(小谷千穂)

© 株式会社神戸新聞社