地元の言葉を「残したい」と方言辞典作成も… 時代とともに使用頻度も変化「自分でもあまり話せなくなってきた」

学生時代から但馬弁の研究を続ける英語科教諭の谷口裕さん=豊岡市城崎町湯島

 あけましておめでとうございます。新年早々、恐縮ですが、「春・夏・秋・冬」をそれぞれ、声に出して読んでもらえませんか。兵庫県の北但馬と南但馬、それ以南では単語のどこを高く読むかの「アクセント」が違うそうです。

 「はる・なつ・あき・ふゆ」が『高低・低高・高低・低高』の人は北但。『高低・高低・高低・高低』だと南但。『低高・高低・低高・高低』の人はいわゆる関西弁です。それぞれ東京式、中間型、京阪式と分類が異なり、若い世代は該当しないこともあります。

 身近な単語を一つ取っても、これだけの違いがある広い但馬地域。「但馬弁」を愛する皆さんの力をお借りして、但馬の生活や文化の多様さを言葉からひもときます。

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 学生時代から但馬弁の研究を続けるという城崎中学校(兵庫県豊岡市城崎町湯島)の英語科教諭、谷口裕さん(59)は2000年6月、自身のホームページに「但馬方言辞典」を作成した。生まれ育った豊岡市街地を中心に、各地での調査や情報を募る作業を重ね、収録する言葉は600語を超えた。今も更新を続ける。

 サイト上では「~だしけ」「~なぁあ」「~っちゃ」をはじめとする特徴的な助詞や文法、アクセントなども紹介。開設翌年の01年には、味があって自らも愛着があり、当時も使われていた言葉30語を選んで番付表を作った。

 時代は昭和から平成、令和へと移ろい、情報技術や交通網も日々発達し、子どもたちが話す言葉も変わってきていると感じる。辞典の中には、今ではほぼ使われなくなった言葉も多い。番付も「地元の言葉が好きで、残したい」と作ったが、その中でも使う頻度が減っており、谷口さんは「自分でもあまり話せなくなってきたと思う」と話す。

 但馬弁の魅力は「優しくて、やわらかくて、のんびりしているところ」。但馬弁は丁寧語の表現が豊かな言葉だとも感じる。「話して、聞いて心地の良い言葉は、決して消えることはなく、伝わっていくのではないか」と期待を込める。(阿部江利)

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