避難者の搬送増 心労、衛生環境悪く

避難所から救急搬送される高齢の女性=5日午前11時50分、輪島市鳳至公民館

  ●DMATが巡回、ケア

 地震発生から5日目を迎え、奥能登の被災地で避難所などからの高齢者の救急搬送が相次いでいる。支援物資の到着で食糧事情は一時に比べて改善されたものの、いまだ十分とはいえず、精神的ストレスや断水による衛生環境の悪化で体調を崩す人が目立つ。災害派遣医療チーム「DMAT」が巡回してケアに当たっているが、避難者が多すぎてカバーしきれていないのが現状だ。避難生活を続けるお年寄りは「持病の薬があとわずか。自分もどうなるか」と不安を募らせる。

 5日午前、輪島市鳳至公民館に救急車のサイレンが響いた。担架で運ばれたのは体調不良を訴えた高齢の女性。「寒い、寒い」。女性は救急隊員の問い掛けにか細い声で繰り返した。

 公民館近くで車中泊を続ける年配の男性は、走り去る救急車を見て「またか」とつぶやいた。この数日で3回ほど搬送される高齢者を見たといい、「自分もそうならないか不安だ」と明かした。

 約180人が避難している同市河井小でも、体調を崩した人が避難所スッタフに伴われて病院に向かった。河井町の谷律子さん(73)は「腰の悪い夫の状態がだんだん悪なっとる。寒て自分もしんどい」と話した。

 市によると、避難所に来てから持病が悪化して亡くなった人もいる。生活インフラの復旧が見通せない中、避難所生活は当面続く恐れがあり、市の担当者は「DMATや医療関係者の協力を得て健康状態を維持できるよう努める」と語った。

  ●輪島高へ被災者移動 輪島市役所から

 市は5日、市役所を復旧の活動拠点として機能させるため、庁内で生活していた被災者約250人に輪島高へ移ってもらった。堀町の柿木大介さん(60)は「環境が少しでもよくなればありがたい」と期待した。70代の女性は「雨の中、どこもかしこも壊れてしまった輪島のまちを見ながら歩くのがつらい」とうつむいた。

  ●インフルも増加

 能登町の大森凡世町長は5日、オンライン出席した石川県災害対策本部員会議で「避難所ではインフルエンザや体調不良の住民が増えている。DMATの増員が必要だ」と訴えた。

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