〈1.1大震災〉「最後の別れ」どこで 奥能登の火葬炉、8基中稼働は1基

地震で炉が壊れ、稼働できなくなった火葬場=輪島市三井町新保

  ●他市町で受け入れも

 多数の死者が出た能登半島地震で、奥能登にある火葬場がほぼ全て稼働できない状況になり、葬儀関係者が「最後の別れ」の対応に追われている。唯一火葬炉が使用可能な能登町の施設に遺体が集中し、金沢市などにも運んで火葬する事態に。火葬まで1週間以上掛かるケースも出ているが、突然命を奪われた人たちの尊厳を守ろうと被災者を弔う現場は奔走している。

 石川県によると、奥能登の火葬場は輪島市のやすらぎの杜、珠洲市営斎場、能登町の能登三郷斎場の3カ所で火葬炉は計8基。珠洲、輪島は全基が損傷して使えなくなり、能登の1基のみが応急修理して稼働している。ほかの7基は復旧のめどが立たない状況で、能登の1基も火葬できるのは現在1日2体までだという。

  ●ひつぎも不足

 葬祭業の布浦百貨店(能登町宇出津新)によると、8日時点で安置所に3体の遺体を預かっているが、ひつぎも不足し、新たな葬儀の受け付けは厳しくなっている。布浦和彦社長(76)は「奥能登でひつぎが足りなくなるとは思わなかった」と広がる被害に苦渋の表情を見せる。

 県と災害時の協定を結ぶ県葬祭業協同組合は、他市町での遺体の受け入れを行う「広域火葬」を手配。受け入れ先は金沢市、白山市が各2カ所、小松市、能美市、内灘町が各1カ所となっている。

 内灘町の河北斎場では7、8日と、2日連続で1日当たりの上限となる8回の火葬を実施。地震の被災者は3~4件あった。施設担当者は「手一杯だ」と漏らす。組合に加盟する葬儀会社では霊きゅう車を計約10台保有しており、奥能登の安置所から斎場への移送を担う。

 ただ、道路の寸断や渋滞、大雪と交通状況は極めて悪く、広域火葬は1日数件にとどまっており、組合の担当者は「現状では手が足りず、1週間以上掛かることもある」と話した。9日には他県の葬儀関係者が応援に入るという。

 輪島市市民課には、7日までに広域火葬の申し込みが32件あった。地震による死者はこのうち28件で、担当者は「被害の全容がまだ見えない。今後も申し込みが続くだろう」と語った。

  ●他県の寝台車活用

 犠牲者の拡大に伴い、遺体を運ぶ車が必要になるため、10日に他県の寝台車を活用した搬送が始まる。石川県が全国霊柩自動車協会県支部に協力を要請した。

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