〈1.1大震災〉受験生「家族のためにも」 13、14日・大学入学共通テスト

再会した級友と願書を確認する山本夏希さん(中央)=金沢市内のホテル

  ●車庫の灯りで勉強 前龍二さん

 13、14日の大学入学共通テストを受けるため、被災地の受験生が12日、試験会場のある金沢市などに入った。珠洲市正院町の自宅が倒壊した飯田高3年の前龍二さん(18)は、無事だった車庫に家族4人で身を寄せ、片付けの合間を縫って勉強を重ねた。「支えてくれた家族のためにも頑張る」。がれきの下から父が探し出してくれた教科書と参考書を手に、追い込みに励む。

 前さんは地震後、一家で近くの正院小に向かったが、校内は既に避難者であふれており、倒壊を免れた自宅車庫で生活を送ることになった。「最初の数日間は生きるために精いっぱい。勉強どころじゃなかった」と振り返る。

 受験を控えた息子のためにと、父親はつぶれた家から教科書と参考書を見つけ出してくれた。日中は自宅の片付け作業をこなし、日が落ちてから車庫の灯(あか)りで勉強に励んだ。

 テストが3日後に迫った10日、「すっきりした気持ちで受験してほしい」と、両親が金沢市内の温浴施設に連れ出してくれた。日帰りの強行日程だったが、久々の湯船が疲れを癒やしてくれたという。

 試験勉強は十分でなく、「正直、自信はあまりない」と前さん。ただ、不思議と緊張はしていない。「父と母、姉のために頑張るだけ。できることをするしかない」。無心で本番に臨む。

  ●故郷のエールに奮起 山本莉子さん

 飯田高3年の山本莉子さん(18)=能登町小木=は4日、避難先の同町小木中から金沢の親類宅に移ってテスト勉強を進めてきた。「本当は小木を離れたくなかった」が、家族や親戚に「勉強に集中して」と送り出された。

 金沢へ出発する日は近所の人も見送りに集まってくれた。「頑張ってこい」。地元一丸のエールを受けて迷いはなくなった。「私にできるのはテストで点を取ること。志望校に合格し、みんなを喜ばせたい」。大好きな家族と故郷のため、全てを出し切る覚悟だ。

  ●友人と久々の再会「力湧いた」 山本夏希さん

 飯田高3年の山本夏希さん(18)=能登町宮犬=は12日、避難先である同町の不動寺公民館から金沢入りした。公民館ではほとんど勉強が手に付かなかったが、この日、久々に高校の友人と再会。「力が湧いてきた。こうなったらやってやる」と力強く語った。

 飯田高の嶽桂輔教頭によると、学校は地震直後から避難所となり、補習などは一切行えなかった。嶽教頭は「生徒は明るく前向きで、われわれが勇気づけられた。自分がやってきたことを信じ、実力を発揮してほしい」と期待を込めた。

 嶽教頭によると、同高からは計40人が共通テストを受験する。このうち25人は12日にバスで地元を出発し、事前に金沢入りしていた生徒と合流して試験会場の金沢学院大を下見した。バスの出発式にはテストを受けない3年生や教員らが駆けつけ、角秀明校長が「飯高生(はんこうせい)は必ず乗り越えられる」と激励した。

  ●輪島高から33人受験

 輪島高からは33人がテストに挑む。自宅が被災した3年の安田蒼唯(あおい)さん(18)=門前町本市=は「受験よりも門前に残る家族が心配」と打ち明けた。

 教員になるのが夢という安田さん。避難所で小さな子と触れ合う中で「困難な状況でも夢や希望を与えられる先生になりたい」との気持ちを強くしたとし「不安はあるが、負けないように頑張る」と前を向いた。父の俊英さん(48)は「今のベストを尽くしてほしい」と本領発揮を願った。

  ●県内5229人挑む

 今回で4回目となる共通テストは石川県内7大学8会場で実施され、昨年より96人少ない5229人が挑む。文部科学省は被災した生徒が共通テストの本試験を受けられない場合、27、28日に予定している追試験を受験できる特例措置を講じる。

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