「ふわっち」のjig.jp、福野泰介社長が乗り越えた転機とは 原動力は「常に新しいものを作り続ける」 

常に新しいソフトウエアを開発し続けてきたjig.jpの福野泰介社長=福井県鯖江市横越町の同社本店・開発センター

 トレンドが急速に変化するIT業界で20年以上生き抜いてきた。福野泰介(45)が2003年に創業したソフトウエア企画開発のjig.jp(本店福井県鯖江市)が送り出したサービスは100近くに達する。従来型携帯電話からスマートフォンへの大転換も乗り越えた。「常に新しいものを作り続ける。作る力さえあれば何とでもなる」。迷いなく先を見詰める。(敬称略)

無限に

 プログラミングとの出合いは小学3年生の時。ゲームに熱中したが、新しいソフトはめったに買えない。「なければ、欲しいものを自分で作ればいい」。少年ながらの発想の転換だった。

 買ってもらったパソコンで、本に載っているコードを打ち込んだり、ソフトを改造したり。「材料費もかからず無限に作れる。楽しかった」。のめり込んだ結果、福井高専在学中に企業の仕事を請け負うまでになった。

 卒業後、2社の起業に関わったが、次第に大手から受ける仕事が中心になった。自分が欲しいものを作りたかった。「本当にやりたいことをやるには、社長でないとできない」。jig.jpを創業した。

⇒東証グロース上場するjig.ip、福野泰介会長インタビュー

これはチャンス

 最初に開発したのは、携帯電話のパケット代を節約するソフトウエア。しかし完成直後、通信会社からパケット代定額の料金プランが発表された。「サービスが無意味になる大事件。でも、これはチャンスだ」。考えを瞬時に切り替えた。

 定額なら通信量の多いパソコン用のサイトを携帯で見ることができる。すぐに開発を始め、閲覧用の「jigブラウザ」を発表した。無意味になってしまったソフトの開発時に取り組んだ、小さなデータでソフトを作る技術を生かし完成させた。利用者は一時10万人を超えるヒット作になった。

 新たな波が襲った。2010年代のスマホの普及だ。「ガラケー」用のjigブラウザの利用者は減少、スマホ用アプリを次々と出したが売れなかった。 ⇒【続きを読む】試行錯誤したアプリは20、そして「ふわっち」が完成

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 連載「経営の流儀」近年は予測困難な「ブーカの時代」と呼ばれ、経営トップの手腕は重要度を増している。福井県内企業でこれまで変革を目指したベテラン経営者たちの経営哲学や流儀に迫る。

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