サッカーJ2のV長崎は昨年末からカリーレ監督の契約問題に揺れた。まだ解決には至っていないが、心機一転、下平HCの下で新シーズンの開幕に向けてチームづくりに励んでいる。下平HCのビジョンや今季の戦い方などを探った。
沖縄キャンプ初日の1月29日午後4時。天候に恵まれ、歓迎セレモニーを終えたチームの輪の中心に下平隆宏ヘッドコーチ(HC)がいた。
「J1昇格には、この沖縄キャンプでの土台づくりが大事になってくる。集中して取り組んでいこう」
V・ファーレン長崎は気持ちを新たにキャンプをスタートした。
「ナイスラン」「丁寧にやるぞ」「次につなげよう」-。グラウンドには前向きな言葉が響く。選手、スタッフの一部の誰かではなく、全員で声を出し合って良好な雰囲気をつくり出していた。昨年は乏しかった「一体感」が、今のチームにはある。昨年末にブラジル人のファビオ・カリーレ監督の誠意を欠く契約問題に巻き込まれたが、監督不在の不安は一切感じない。
下平HCは昨季まで2年間、同じJ2の大分を率いて退任した。V長崎はカリーレ氏の動向を把握後、すぐに複数人の監督候補をリストアップ。面談した上で、竹村栄哉テクニカルダイレクターは「長崎の選手を一番評価してくれた。今いる選手をうまく融合させてくれると判断してヘッドコーチをお願いした」。実質的な指揮官としてチームを託した。
下平HCが就任して二つの変化が生まれた。一つ目は「和」だ。例えばトレーニングマッチでは、ピッチで戦う仲間をメンバー外の選手たちがベンチ際で鼓舞し続ける。当たり前のようで、昨季はあまりなかった光景が広がっていた。MF増山朝陽は「サッカーをやっていて楽しい。試合に出る人は出られない人の思いも背負ってピッチに立てている」と表情は明るい。
二つ目は「規律」だ。下平HCは過去2年間、V長崎と対戦して「攻撃力はある。課題は守備」と見ていた。キャンプでは何度もプレーを止めながら守備の構築に時間を割いた。チーム7年目のDF米田隼也は言う。「みんなが同じ絵を描けている。今までになく開幕が待ち遠しい」