冬季国スポ・アルペン、約300メートルで行う異例のコース 整備協力、他県関係者も訴え

全長がさらに短縮され約300メートルとなり、コース状況を確かめる他県選手団=20日午後5時17分、最上町・赤倉温泉スキー場

 最上町の赤倉温泉スキー場で22日から行われる「やまがた雪未来国スポ」のアルペン大回転で大会組織委員会は20日、雨による融雪のためコースを約300メートルに短縮することを決めた。全長1051.50メートルから19日に約480メートルとし、再び短縮を余儀なくされる異例の事態。荒れた雪面に不安の声がある一方、他県コーチ陣から「コース整備に協力しよう」との呼びかけがあるなど、大会実施を後押しする動きが出ている。

 暖冬少雪に加え19日からの雨で融雪が進み、スタート位置を約180メートル下げる判断をした。雪面は一部で小石が浮いている状況で、下見した奈良県の男子選手(52)は「用具へのダメージが心配。何人も滑ると雪がえぐれて地面が見えてこないか不安だ」と語った。

 多くの関係者は「全長300メートルで行うアルペン大回転はまずない」と口をそろえた。コース幅も通常より狭まり、旗門設定を行うコースセッターは、安全性と競技性をどう両立させればいいか悩む。担当者は「コース脇のネットが近い状況で、安全を確保するため極力、コースの中央を滑る形になる」と話した。

 20日夕に最上町で開かれたアルペン競技の監督会議では、北海道の関係者から「レース前にコーチ陣でコース上の小石を拾い整備に協力しよう」との呼びかけがあったという。会議後は「用具の傷みや転倒時のけがが心配だが、こうして競い合うことができる事に感謝したい」(鳥取県・森谷哲郎総監督)、「コーチ陣も安全な大会運営に協力したい」(東京都・田中学監督)などの声が聞かれた。

 全日本スキー連盟の林辰男理事は会議後の取材に「山形県、最上町、スキー場担当者の方が大変な思いをして滑走できる環境をつくってくれた。心から感謝したい」と述べた。本県選手団の菊地勉総監督は「最後までやり抜くという共通認識が協力的に生まれたことを大変ありがたく思う」と感謝した。

雪運び、上部までは限界

 赤倉温泉スキー場には例年、豊富な雪があるものの、今年は19日午前9時半現在で、国体コースのスタートハウス付近はほぼ0センチだ。コースの上部は地面が露出している部分もあり、依然として滑走は不可能な状態となっている。

 スキー場を運営する町は今月1日以降、冬季閉鎖中の最上東部広域農道(新庄市)や尾花沢市内など、範囲を広げて約1万立方メートルの雪を集め、運び込んだという。フィニッシュライン付近は90センチほどの積雪を確保しているが、同スキー場によると昨年の同時期は上部が180センチ、下部は135センチあったという。搬入した雪は圧雪車などでゲレンデの上の方へ運び、斜面に雪を付けてコース整備を進めてきた。

 ただ、競技実施には圧雪後の積雪が最低50センチ程度必要。この積雪深にするために上部まで雪を運ぶには限界もある。町の担当者は「ここまで雪が少ない冬は初めて。なんとか大会が予定通り進むよう祈るしかない」と話した。

© 株式会社山形新聞社