2023年度 福島県沿岸漁業26人就業 30代以下8割超 原発事故後で最多

 本格操業への移行準備が進む福島県の沿岸漁業に2023(令和5)年度、新規就業した漁業者は26人となり、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生後で最多となった。県が27日、発表した。30代以下の若年層の新規就業者も最多を更新し、県などは操業拡大に向けた機運の高まりが、若い担い手の確保につながったとみている。県は研修費の補助など円滑な就業の支援や、風評対策などを通し、漁業の復興を後押しする。

 沖合底びき網漁業を含む福島県沿岸漁業への新規就業者数の近年の推移は【グラフ】の通り。2023年度に漁業に就いた人のうち、今年4月1日時点で就業している漁業者(15歳~64歳)は26人となり、震災と原発事故発生後で最多だった2020、2022年度の17人を9人上回った。このうち、若年層(15歳~39歳)は22人と全体の8割超を占め、全体を押し上げた。

 新規就業者のうち、親や兄弟らが漁業を営む「漁家子弟」は15人だった。一方、高校卒業後や別の職業から就業した人も11人に上っており、福島県漁業への関心が幅広い層に広がっている状況がうかがえる。震災前の2006~2010年度の5年間の新規就業者は平均9.8人だった。

 県は2022年度から漁業の担い手確保に向け、新規就業に必要な漁船・漁具の導入費の補助や、新規就業者向けの研修費の補助などを行っている。県産ヒラメなどの「常磐もの」が市場で高い評価を得ている状況も追い風となり、2023年度の水揚げ量は6644トンと震災前の25%、水揚げ額は39億6600万円で震災前の43%まで回復した。

 地区別では相馬双葉漁協が20人、いわき市漁協が6人だった。相馬双葉漁協は本格操業に向けて水揚げ量が年々増える中、仕事としての福島県漁業に魅力を感じる人が増えているとみている。現役漁業者の間でなりわいを次の代に継承する意識が高まり、後継者が賛同して同じ道に進むケースも考えられるという。同漁協の担当者は「漁業者の年齢層が若返り、今後の本格操業に向けて弾みが付く」と福島県漁業の復興を支える若手人材の増加を歓迎した。

 県は総合計画で、2021年度以降の10年間で新規就業者数を累計100人以上、2030年度の沿岸漁業の水揚げ額で震災前を上回る100億円とする目標を掲げている。県水産課は「人材確保の支援策を続けるとともに、処理水放出に伴う風評対策や県産水産物の魅力PRなどに引き続き注力する」と福島県漁業全体の底上げを図る考えだ。

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