郡山の黒いヤツ(5月30日)

 真っ黒なスープに目を奪われる。意外や意外、しょっぱくない。しょうゆの香ばしさ、まろやかなコク、うまみが口中に広がる。郡山っ子になじみのご当地ラーメン「郡山ブラック」だ▼全国に知られた富山ブラックの「本歌取り」だろうか。呼び名は「2000年代の初め頃から一部のラーメンファンの間に広がり始めた」(こおりやま情報グルメBOOK)。市の広報誌やパンフレットにお目見えして、今年でちょうど10年になる。土産の麺セットやカップ麺が商品化され、瞬く間に全国区になった。昨年度、文化庁の「100年フード」に認定された▼大正時代、一軒の食堂が提供した中華そばが起源とされる。鶏ガラなどから取るだしと、しょうゆダレを一つのずんどうや鍋で合わせ煮詰めて独特のスープが生まれる。伝統的な製法は郡山クラシックブラック。店独自ブレンドのたれとスープをどんぶりで合わせるのは、郡山ネオブラックといわれる▼型にはまった基準がないのが、いい。スープのだしや麺の太さ、具材にそれぞれの店の個性が宿り、進化を続ける。開拓者精神と自由な気風を秘めた商都自慢の味。喜多方、白河とともに「福島三大ラーメン」に。<2024.5・30>

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