「メダルがゴール」 自転車トラックパリ五輪代表の窪木(福島県古殿町出身) 8年前の雪辱誓う

パリ五輪で3種目への出場が決まり、活躍を誓う窪木(中央)

 「今度こそメダルを持ち帰る」。パリ五輪を戦う自転車トラック日本代表の記者会見が29日開かれ、福島県古殿町出身の窪木一茂(34)=ブリヂストン、学法石川高出身=が2大会ぶり2度目の大舞台を前に8年前のリオデジャネイロ五輪の雪辱を誓った。練習環境の変化や競輪への挑戦を経て心身を鍛え、中距離のエースに。たくましさを増したベテランは4000メートル団体追い抜き、2人1組のマディソン、4種目の合計点を競うオムニアムに挑む。

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 日本自転車競技連盟が静岡県伊豆市の日本競輪選手養成所で開いた記者会見。選手の登壇後、連盟の中野浩一選手強化スーパーバイザーがそれぞれの出場種目を発表した。3種目への出場を明かされた窪木は「支えてもらった皆さんに感謝し、思い切りレースを走りたい」と気持ちの高ぶりを抑えるように語った。

 初出場した2016(平成28)年のリオ五輪はオムニアムで総合14位。「全く歯が立たなかった」。本場・欧州での武者修行を終え、無念を晴らそうと2018年にブリヂストンに加入。東京五輪の会場となった伊豆ベロドロームなどを練習拠点に2大会連続となる五輪を狙ったが、自国開催の舞台には立てなかった。

 勝てる選手を目指す―。競輪に挑戦した。距離の短いレースでスプリント力を磨き、常に緊迫した状況に身を置くことで勝敗への執着が増した。精神的にも成長した。代表チームで長く活動し、ベテランが抜け、若手が入る間に最年長となった。若手の欠点を指摘し、長所を伸ばすために積極的に助言した。自身がリーダーとして引っ張り、気を配った。パリ五輪の出場枠の配分を決めるランキング対象大会では安定した成績を収め続け、日本の出場権獲得に貢献した。

 第一線で戦い続ける原動力の一つには古里への思いがある。五輪切符を巡る争いが続いていた昨年10月に母校の古殿小を訪問。直前の杭州アジア大会で得た2個の金メダルを手に、子どもたちに夢を持つ大切さを伝えた。今年2月には古殿町の「ふるさと応援大使」に就いた。

 古里の人々との交流が励みになっている。「地元の福島県の皆さんはじめ、多くの方々に五輪のメダルを見せたい」。恩返しのため、輝く手土産を持ち帰るつもりだ。

■「経験豊富で、精神的にも身体的にも安定」 チーム内の信頼厚く

 男子中距離陣で窪木は抜きんでた存在だ。中距離コーチは「経験豊富で、精神的にも身体的にも安定している」と評価。3種目を任されたことからもチーム内の信頼の厚さがうかがえる。マディソンでペアとなる橋本英也(30)=ブリヂストン=は「これまでで一番強いと思う。コミュニケーションを取り、メダルを目指したい」と頼りにしている。

 窪木は今季のネーションズカップでは3月の第2戦(香港)4000メートル団体追い抜きで銀メダル、マディソンで銅メダルを獲得。4月の第3戦(カナダ)はオムニアムで銀メダルに輝くなど好調を維持してきた。

 パリ五輪の自転車競技は8月5日から11日まで行われる。五輪自転車競技の県勢の出場は、パリで6大会連続となる。

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