能登の工場続々再開 スギヨ、5カ月ぶりに

ビタミンちくわの生産を再開したスギヨ北陸工場=七尾市西三階町

  ●主力「ビタミンちくわ」生産

 練り製品メーカーのスギヨ(七尾市)は31日、能登半島地震による被害で停止していた北陸工場(同市)での生産を約5カ月ぶりに再開した。まずは主力商品の「ビタミンちくわ」の製造から始め、揚げかまぼこなどの生産ラインは徐々に稼働させて6月中には地震前と同様の体制に戻す。これで被災した市内3工場全てが再開した。地震発生から5カ月を前に、甚大な被害を受けた各社の生産拠点では復旧を終え、稼働を始める動きが相次いでいる。

 生産ラインから焼き色の付いたちくわが出てくると、従業員はほっとした表情を浮かべた。この日はビタミンちくわ約10万本を生産。翌1日には、北陸をはじめ、生産量の7割ほどを消費する長野県などの小売店に並ぶ。

 本社のある北陸工場では地震で天井や壁の部材が落下し、水やガスの配管が破損するなどの被害を受け、修繕を進めていた。

 七尾市内では、北陸工場のほか、カニカマの商業団地工場は2月末、グループ会社「能登半島」の工場は3月上旬に生産を一部再開した。

  ●七尾に新拠点 杉野社長が方針

 杉野哲也社長は生産再開について「ビタミンちくわは代々大切にしてきた商品であり、復活が能登の復興につながるだろうとの思いでやってきた」と話した。

 今後の生産体制に関しては、液状化の被害が著しい七尾市府中町にある「能登半島」の工場の生産設備を、北陸工場の付近に新たな工場棟を設けて移す方針を示した。10億~20億円の投資になる見込みで、検討している新商品の生産も担う予定。

 能登に拠点を置く製造業では一部生産再開にこぎ着けたものの、100%稼働に戻っていないケースが少なくなく、生産ラインの稼働率アップを急ぐ。

 村田製作所は5月13日に穴水村田製作所(穴水町)でスマートフォンやパソコンなど電子機器向け部品の生産を開始した。これにより、北陸の全13拠点が稼働に至った。ただ、担当者によると、建屋や設備の損壊が深刻だった穴水村田やワクラ村田(七尾市)は100%稼働の見通しは立っておらず、復旧を進める。

 志賀町に生産拠点を置く光学機器メーカーのシグマ光機(埼玉県日高市)は5月末で大部分の生産設備の復旧対応が完了。今後は製品の安定供給に取り組む方針としている。

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