新卒採用面接解禁日のはずですが…企業の照準早くも再来年卒へ 学生優位の「売り手市場」に解禁ルール形骸化、来年採用ほぼ終幕 オワハラ相談も増加中 鹿児島県内

約60企業が出展しにぎわうセミナー会場=1日、鹿児島市郡元1丁目の鹿児島大学

 1日に面接が解禁日を迎え、鹿児島県内でも大学生の就職活動が大詰めに入った。一方で、解禁前に選考を開始する企業は多く、就職活動の早期化は加速。大学側は「選択の自由を奪わぬようルールを守ってほしい」と求めるが、人事担当者からは「優秀な人材を大手や都市部に取られないよう早めの囲い込みは仕方ない」と本音が漏れる。

 学生優位の「売り手市場」は県内でも顕著だ。鹿児島銀行人事部の西村和高さんは「特に東京など都市部の企業の選考が早まり、つられるように県内企業の採用も早期化している」と明かす。大手企業の担当者も「県内でもより良い条件の企業に学生が流れている」。この企業では最終選考を終えたが、受験者は昨年の3分の2まで落ち込んだ。

 企業側は既に2026年卒業の学生獲得に照準を絞る。1日は鹿児島大学で大学3年生向けのセミナーが開かれ、県内の約60企業がブースを並べ、学生に自社の魅力をPRした。

 採用担当者は「ほとんどの企業が25年卒の選考を既に進め、今は26年卒の学生へのアピールに注力している。政府の要請する解禁ルールに意味はあるのだろうか」と疑問を呈する。別企業の担当者は「大学1、2年という早いうちから興味を持ってもらうことが大事。今回はあくまでセミナーなので、優秀な学生がいてもアプローチできない」ともどかしさをにじませた。

 早まる就活を学生側は、どう感じているのか。セミナーでブースを回っていた鹿大法文学部4年の野中くるみさんは公務員を志望し勉強中。「もしダメだったら民間も受けたいが、すで大半の企業で選考が終わっていた。どうすればいいのか」と嘆く。同部3年の女子学生は「早期選考企業の内定を先に得られれば、本命企業を受ける際にも余裕が生まれる」と歓迎した。

 鹿大学生部キャリア形成支援課の久木田寿代課長は「内定を出した企業から、就活を終えるよう迫られる“オワハラ”の相談も増えている。学生の意思で自由に選択できるよう企業には配慮してほしい」と年々早まる就活戦線にくぎを刺した。

企業の魅力を学生らに説明する採用担当者ら=1日、鹿児島市郡元1丁目の鹿児島大学

© 株式会社南日本新聞社