【日曜特番・大の里なぜ強い】元白鵬「綱は間違いない」

能登半島地震の避難所を訪問する大の里=2日、いしかわ総合スポーツセンター

 大相撲夏場所で12勝を挙げ、史上最速となる初土俵から7場所で初優勝した津幡町出身の大の里=本名中村泰輝(だいき)、二所ノ関部屋=。23歳のちょんまげ力士が入門から1年余りでつかんだ賜杯に、親方衆は「まぐれではなく実力」と評する。192センチ、181キロの恵まれた体格を生かし、重くて速い攻めの相撲は「まだ発展途上」との声も。一体どこまで強くなるのか。(東京支社・森角太地)

  ●重い、速い、圧がすごい

 「未来は明るいな。横綱は間違いない」

 千秋楽の26日、両国国技館内の記者室で、優勝を決めた大の里の一番を見詰めていた宮城野親方(元横綱白鵬)がつぶやいた。歴代最多となる45回の幕内優勝経験を誇る大横綱も、大の里の潜在能力の高さを感じ取っていた。

 優勝が懸かった千秋楽の大一番は、まさに力の差を見せつけた。敗れた関脇阿炎は取組後、「力が伝わる前に圧力を受けた。速い。重い」と実力を認める言葉を並べた。

 大の里の強さの神髄は「前に出る圧力」。場所中も高田川審判部長(元関脇安芸乃島)は「前に出ようという意識がある。前に出ていく相撲が増えれば、どんどん勝っていく」と太鼓判を押した。引いて勝った相撲もあったが「圧力があるから引きが効く」と指摘する。

  ●押し出し42%

 日本相撲協会の記録によると、初土俵以来、大の里の決まり手は42%が押し出しで、寄り切りが27%で続く。引き技のはたき込みは10%に過ぎず、前に攻めて勝つことがデータからも示されている。

 実際に胸を合わせた力士からしても、大の里の圧力を脅威と捉える。今場所5日目に初対戦で敗れた大関霧島は「自分が左上手を取ったのに、相手の攻めが全く止まらなかった」と脱帽した。自分不十分、相手十分の形になられても、構わずに押し切るだけの攻撃力が大の里にはある。

 目の肥えた大相撲の番記者も「普段は相撲を見ないような素人にも『この人は強いんだ』と納得させるだけの分かりやすく強い相撲を取る」と評価する。

  ●元稀勢の里「完成度まだ10%」 伸びしろ十分

 快進撃を続ける大の里だが、師匠である二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)はまだ認めていない。「まだ完成度は10%。土台がないと育たないし、四股も不十分なので『腰割って、四股踏んで』と(基本を)言い聞かせている」と厳しい評価を下している。つまり、大の里はまだ「完成」しておらず、伸びしろがあるということ。「お前の目標はここじゃない」という師匠からの言葉を胸に、大の里が上へ上へと駆け上がる。

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