ご当地の「アルプス」であり「富士」とも称される、デビュー最適&絶景の低山! 登山レポ

山頂の大岩(撮影:野口宣存)

去年の夏、筆者は播磨アルプスにて、炎天下の中で撤退を余儀なくされた。

播磨アルプスは、岩場が多い典型的な播磨地方の山。そのため眺望が良いかわりに木陰が少なく、夏場の登山道は、まるで焼肉の石焼プレートのようになる。

そこで今回は暑い夏を避け、“再び”播磨アルプスにやってきた。

■登山デビューに最適な播磨アルプス

播磨アルプス。赤線が今回歩いたルート(国土地理院地図より引用)

播磨アルプスとは、兵庫県高砂市と加古川市にまたがるご当地アルプスだ。最高峰の高御位山(たかみくらやま)でも標高304m。そんな低山にもかかわらず、登山道全体が眺望抜群。その登山道の絶景を天空の散歩道と言う人もいるくらいだ。

登山デビューに播磨アルプスをおすすめする理由は、登山客が多いため、有事の時、他の登山客に発見してもらいやすいということ、道標や道がはっきりしていること、難所というほどの場所がないこと、標高が低いこと、登山道が全体的に眺望がよく、現在地が把握しやすいこと、里に近いこと、登山口の多さなどなど…… 挙げるときりがない。また登山口が多いということは、自分の実力や体力に合わせてルートを組みやすいということだ。

それでもいざとなれば多くの登山口がエスケープルートになり、下れば人里という安心感もある。実際去年の夏、播磨アルプス縦走を試みた筆者は、西側の鹿嶋神社登山口へエスケープした。

■百間岩から鷹ノ巣山、美しい馬の背の稜線

この鳥居が播磨アルプス鹿嶋神社登山口(撮影:野口宣存)

前回播磨アルプスに臨んだ際は、最寄りのJR曽根駅から350m、徒歩6分の豆崎登山口から縦走路西側ルートを登り始めた。しかし1時間半程度歩いたところであまりの暑さに危険を感じ、東西へ縦走するルートの分岐である鹿島神社登山口へエスケープ。今回は、前回エスケープした鹿嶋神社からスタートすることにした。

豆崎登山口
住所:〒676-0827 兵庫県高砂市阿弥陀町2087

鹿嶋神社
住所:〒676-0828 兵庫県高砂市阿弥陀町地徳279

登り始めてすぐに到着したのは百間岩(ひゃっけんいわ)。ここは鹿嶋神社の裏にある播磨アルプスの名所の一つだ。神社からも見える巨大な岩山で、下からでも登っている人がよく見える。もちろん百間岩からの眺望は大迫力である。

播磨アルプス縦走路(撮影:野口宣存)

百間岩を過ぎると、軽いアップダウンの道をしばらく歩く。縦走路は常に絶景なので、途中にある鷹ノ巣山に至るころには絶景に慣れてしまう。すると興味は絶景から花や虫などに移り始める。

しかし鷹ノ巣山を少し過ぎた馬の背コースとの分岐付近で、再び馬の背の稜線の美しさに感動。馬の背コースは播磨アルプス名所の一つで人気の登山道でもある。

■播磨アルプス最高峰、高御位山

播磨アルプス高御位山山頂に鎮座する高御位神社(撮影:野口宣存)

播磨アルプス最高峰の高御位山は、別名播磨富士とも呼ばれる信仰の山だ。ここは、古代から神奈備(かんなび)という山自体がご神体の山。山頂には祭祀跡の遺跡も残り、巨岩の上には小さな祠がある。浮遊感を感じるほどの絶景で、古代の人たちが神の存在を感じたのにも納得がいく。

播磨アルプス高御位山山頂(撮影:野口宣存)

巨岩の隣には高御位神社とお守りを売る社務所、立派な公衆トイレもあった。また、高御位神社では「高御位のうた」がエンドレスで流れ続け、にぎやかな観光地のような様相を呈している。

■播磨アルプス東側縦走路

播磨アルプス東側縦走路を進む(撮影:野口宣存)

高御位山を過ぎると、高御位山のメイン登山道である成井登山口へ下るルートと、東側縦走路との分岐に至る。筆者は東側縦走路へ進んだ。東側縦走路は歩いている登山客も少なく、物静かな雰囲気である。

東側縦走路の魅力は間近から高御位山を見上げることができること。山の下から見る高御位山も美しいが、より近くから見上げる高御位山は格別で、穴場的ルートである。

最後は播磨アルプス東側にある北山鹿島神社へ下山予定だったが、標高183mの北山奥山へ寄り道した。ここからは高御位山山頂が少し見えるだけ。高砂や加古川の街を見下ろすのどかな里山の風景といった感じで、絶景が続いていた縦走路とは雰囲気が異なる。

北山登山口
住所:〒676-0826 兵庫県高砂市阿弥陀町

なお、今回筆者が歩いたルートは約6km、休憩30分も含め、5時間半くらいの行程だった。写真を撮りながらかなりゆっくり歩いたので、普通に歩けばもう少し所要時間は短くなっただろう。

■播磨アルプスで注意すべきこと

播磨アルプスは難易度が低く初心者向けの山だが、いくつか注意すべきことがある。

まずは日差しだ。播磨アルプスは岩の上を歩くルートが多いので、直射日光を浴び続けることになる。快晴の時は春でも、帽子を着用したり、多めに冷たい飲み水を携帯するなど、熱中症対策を忘れてはいけない。飲み物は多めに持って行ったほうがよいだろう。

また、登山道には触るとかぶれるウルシ科の植物も生えており、日焼け対策も含め、長袖を着用したほうがよい。

加えて岩場は濡れていると驚くほど滑りやすくなる。急傾斜の岩場で滑ると、最悪の場合、滑落事故になってしまう。したがって雨の日の登山は避けたほうがよい。快晴でも岩から水が染み出してる場所や浮砂がある場所では注意が必要だ。

■播磨アルプスへの行き方

播磨アルプス最寄りのJR曽根駅(撮影:野口宣存)

難易度が低く、登山デビューにも最適な播磨アルプスは、人気の山だけあって登山口が多い。無料駐車場もあるので、車で行く場合は、利用する登山口近辺の駐車場を調べておこう。

電車で行く場合は、JR曽根駅が便利である。参考までに今回筆者が利用した鹿嶋神社登山口と北山鹿島神社登山口は共に、JR曽根駅から約2.7km、徒歩40分だ。

播磨アルプスは、雨が降ると滑って危ないため、夏になると灼熱地獄になる。したがって楽しめるのは梅雨入り前までだ。このタイミングを逃すと、次のチャンスは秋以降になる。ベストシーズンの今、登山デビューで播磨アルプスを訪れてみてはいかがだろうか。

曽根駅
住所:〒676-0815 兵庫県高砂市阿弥陀1-6

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