試合直前にまさかの逮捕。元名古屋FWジョーの“地に落ちた”現状「チームメイトもかなりショック」【現地発】

契約期間中に勝手に名古屋グランパスからコリンチャンスに移籍して以来、ジョーの人生はより一層破天荒だ。怪我で欠場しているにもかかわらず、チームメイトが試合をしている最中にクラブでバカ騒ぎした末、勝手に退団宣言したり、サウジアラビアの移籍したもののたった5日間で辞めたり、同じ女性と離婚と結婚を繰り返したり…。

そんなお騒がせ男ジョーが今度はなんと逮捕されてしまった。それも試合の直前というとんでもないタイミングで、だ。

ジョーには8人の子供がおり、うち6人は婚外子である。彼はすべての子どもを認知しており、そのため養育費の支払いが義務付けられている。今回そのうちの一人に対して、期限の4月19日を過ぎても支払いがなかったとして子供の母親がジョーを訴えた。ブラジルでは養育費未払は逮捕の理由となる。

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ちょっと大げさのような気もするが、相手にとっては死活問題である可能性もあるし、なにより未払い案件がそれほど多いということだろう。今回の件も、ただ1回だけ養育費が払われなかっただけでなく、これまで何度も支払いが遅れていたようだ。

実はこの養育費未払いという罪で収監された選手は少なくない。今は国会議員のロマーリオ、ストライカーのドグラス・コスタ、日韓ワールドカップのチャンピオンチームにいたDFのアンデルソン・ポルガ、セレソンのアイドルだったレナト・ガウチョ、フィオレンティーナで活躍したエジムンド、国民的スターだった元柏レイソルのエジウソン...。残念ながら多くの有名選手も名を連ねている。そして今回このリストに新たにジョーが加わったのだ。

逮捕状が出るまでの詳しい経緯は、未成年が関与しているため公にはされていないが、女性からの訴えは4月22日、ブラジル北東部バイーア州のイタギバ市で出されている。しかしジョーは支払いの督促が来ても対応もせず出頭もせず、明らかに警察から逃れようとしていた。おかげでジョーは、養育費不払いで「指名手配」までされていたようだ。

そしてついに5月6日に警察が動く。セリエB第3節、ジョーが所属するアマゾナス対ポンチ・プレタの試合直前だった。警察はスタジアムの前でチームのバスを待っていた。しかしバスからジョーは降りてこなかった。ジョーはカンピーナス市内のホテルからチームメイトと共にユニホームを着てバスに乗ったものの、なにか情報が入ったのか、途中で別の車に乗り換えたらしい。

結局、チーム幹部が居場所を明かし、ついに御用となった。ジョー自身は『訴えられたのを知っていたが、逮捕状が出ているのまでは知らなかった』と供述しているようだが、逃亡を試みたことで悪質であるとみなされ、ジョーは手錠までかけられて連行されたようだ。

ちなみに対ポンチ戦でジョーは先発出場するはずだったが、彼を欠いたからか、それとも仲間の逮捕がショックだったからかアマゾナスはポンチ・プレッタに0-3で完敗した。ジョーはそれまで6試合に出場し、1ゴールを決めていた。

試合前に逃亡したことに関してチームの関与も疑われたがアマゾナスの幹部ウィリアム・アレクサンドル氏は、自分たちは何も知らなかったと釈明する。

「我々は今回の出来事に非常に驚いており、何が起きたかを説明するのも難しいです。ジョーに何が起こっているのかを知ったのは皆スタジアムのバスから降りた時でした。チームメイトたちもかなりショックなようでした」

そして今後は、クラブの法務チームと一緒にこの題を解決していく予定だという。

「私たちは、ジョーをサポートしていきたいと思います。ただそれはジョーのしたことを正当化するのではなく、支払い問題が早急に解決できるようなサポートです。とにかく彼が長く刑務所に留まらないようにしたい」

刑務所で一晩を過ごし、冷や飯を食べた後、ジョーは釈放された。ただ彼が養育費に加えて滞納の罰金をすぐに耳をそろえて支払わなければ、もしくは次回の支払いも滞るようなら、再び拘留される可能性がある。どちらにしろジョーのイメージは最悪だ。すでに地に堕ちていたものが、今は地下にめり込んでいる。

2013年にはアトレティコ・ミネイロでリベルタドーレス杯を手に入れ、2014年にはセレソンでネイマールの横でブラジルW杯を戦った。日本では得点王にも輝いた。それらももう遠い昔だ。

文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子

【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/1963年8月29日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。ジャーナリストとし中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材した後、社会学としてサッカーを研究。スポーツジャーナリストに転身する。8か国語を操る語学力を駆使し、世界中を飛び回って現場を取材。多数のメディアで活躍する。FIFAの広報担当なども務め、ジーコやカフー、ドゥンガなどとの親交も厚い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授として大学で教鞭も執っている。

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