ヤギのふれあいで地域の “つながり”「愛着をもってほしい」 西日本豪雨から再起した飼い主の思い

ヤギとヒツジの力で地域を笑顔にしようと活動を続ける女性が、広島県呉市の安浦町にいます。地元に愛着を持ったきっかけは、豪雨災害で経験した「人とのつながり」でした。

割方遥花 さん(32)です。呉市安浦町の小学1年生に向けて開いたのは、ふれあい授業です。

割方遥花 さん
「口をモグモグしているのは、エサをかんでいる」

子どもたちに命を大切にする心を育んでもらおうと、毎年、この活動を続けています。

割方さんの「女子畑やぎ牧場」を案内してもらいました。

割方遥花 さん
「晴れの日は、自由に行き来できるよう、草を食べてもらっている」

割方さんは、幼いころから動物とふれあうことが大好きでした。小学校では、生き物係として金魚やハムスターを一生懸命育てていたそうです。今は飲食店などで働きながらヤギたちの世話をしています。

割方遥花 さん
「幸せ。時間を忘れるくらい。『食べているな』と思いながら…」

結婚を機に、広島市から女子畑に移り住んだ割方さん。牧場を開いたきっかけは、2018年7月の西日本豪雨です。呉市安浦町でも茶色く濁った川の水があふれ出し、まちが浸水しました。夫・健一郎さん(女子畑出身)と当時を振り返ります。

割方健一郎 さん
「泥だらけでどこから片付けようかと、すごく途方にくれていた」

割方遥花 さん
「見慣れたふるさとの光景が変わって、すごくショックを受けて、(夫は)毎日、泣いていた」

そんな中で被災地のボランティアの開いたふれあいイベントで、ヤギと出会いました。子どもたちの喜ぶ姿などに魅了されたといいます。

割方遥花 さん
「最初は(女子畑に)愛着を持っていなかったが、豪雨災害を機に人とのつながりができた。外の人からも助けてもらった」

住民ではない人たちが、安浦町を大事にしてくれたのだから、自分たちはもっと大切にしたいという思いが強くなったそうです。

牧場は、雑草が生い茂っていた休耕地を活用しました。はじめはペットとして1頭を飼っていましたが、ヒツジとあわせて9頭に増えました。ほかの飼い主に譲ったり、貸し出したりする取り組みもしています。

割方遥花 さん
「迎えてもらった新しい家族とも縁ができるので、ヤギ友が増えていい」

ヤギたちの日常を広く知ってもらおうと、SNSでも発信しています。草の上でぐっすり眠っていたはずが急に飛び起きたり、スロープで滑って遊んだりしている動画を投稿し、人気を集めています。

そんなヤギたちの仕事が、子どもとのふれあいです。先月28日は、割方さんだけでなく、地元のまちづくり協議会のメンバーなどもサポートしました。

ヤギたちは人気者とあって、大忙しです。

割方さんは、健一郎さんとヒツジの毛を刈りました。子どもたちは、命の尊さを学んでいました。

割方遥花 さん
「子どもたちの声が響くのが、わたしたちにとって励みになる。女子畑を、愛着を持ってもらえる。自分のふるさとを知ってもらえたら」

割方さんの「第2のふるさと」での模索がこれからも続きます。

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