「自分一人で動ける環境を」学校のエレベーター設置率 全国平均を下回る現状を考える=静岡【ともにはぐくむ】

子育てや教育を取り巻く課題、そして未来に向けた取り組みについて考える「ともにはぐくむ」です。

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今回は、障害の有無にかかわらず、子どもたちが同じ環境で学ぶ「インクルーシブ教育」の現状を考えます。いま、公立の小中学校はエレベーターの設置に取り組んでいますが、進捗が遅れている自治体もあります。

静岡市に住む小学2年生の、馬淵信乃介くん。小児がんが原因で、1歳のときから下半身を動かすことができません。それでも、腕の力を使って、家の中を自由自在に動けます。ハンカチなどの日用品は信乃介くんの手が届く高さに置いています。

<母親の馬淵志乃さん>
「できることは自分でやって、どうしても困った時は手伝ってもらうよう、自分で声をあげられるように今ちょっと練習してるところ」

2023年、入学先を選ぶのに欠かせなかったのが校舎のエレベーターでした。

<母親の馬淵志乃さん>
「本人が自分一人で動ける環境を一番に考えたんです」

最寄りの小学校にエレベーターはありませんでしたが、車で15分の清水飯田東小学校にありました。信乃介くんの教室は2階です。友達と同じように、丸つけに並びます。

<清水飯田東小学校 佐藤菜子教諭>
「周りの子たちも困ってる姿を見たら助けてあげようとしたり、馬淵さんも、ほかの子が迷ってたりしたら自分から助けてあげるよって言ってる姿を見たりします」

エレベーターを使う時は、看護職員が付き添います。教員が給食のワゴンを運んだり、ケガをした子や体調の悪い子、妊婦なども活用しています。

<母親の馬淵志乃さん>
「すごく楽しそうに過ごしているので。1回も行きたくないという日はなかったので。行かせてよかったと思っています」

しかし、こうした小中学校は、まだまだ少ないのが現状です。静岡市内には124の小中学校がありますが、校舎にエレベーターがあるのは9校だけです。

静岡県内35市町のうち、15の市町では、エレベーターのある校舎がありません。

10月末に改築が完成する予定の富士宮市の中学校です。

<富士宮市教育総務課 佐野貴明主幹>
「エレベーターは、こちらになります」

2020年の法改正で、校舎を新築や改築する際は、エレベーターの設置が義務付けられました。国は既存の校舎でも、配慮を必要とする子どもがいる場合は、設置を促していますが…。

<富士宮市教育総務課佐野貴明主幹>
「(既存の校舎に)取り付けるというと、場所の問題であるとか、あと構造的な問題。壁に穴を開けたりとかもしないといけないものですから、その辺りで、後からエレベーター設備を付けるのは、なかなか難しい」

<伊豆田有希ディレクター>
2022年の調査で、静岡県内の小中学校校舎の設置率は13.3%と、全国平均29.0%を下回っていました。

<水野涼子キャスター>
どうしてこのような結果に?

<伊豆田有希ディレクター>
校舎の耐震補強を優先してきたことが、背景にあるようです。既存の校舎に設置するには、2億円以上かかるケースもあり、設置は簡単ではありません。

<水野涼子キャスター>
エレベーターのない校舎に、車いすを使う子どもが通う場合、どうしているのでしょう。

<伊豆田有希ディレクター>
こちらの中学校では、階段昇降機を使っていて、普段は介助員が生徒を乗せて操作しています。移動に時間がかかったり、エレベーターと比べると、負担があるとは感じました。

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