旭川にずらりと並んだ謎の「T」はいったい何? “ケレップ水制”から岡山の歴史が見えてきた【岡山】

岡山三大河川の一つ、岡山市の中心部を流れる旭川。その河口付近で、干潮時になると、ズラリと顔を出す謎のアルファベットをご存じですか? 調べてみると、岡山の歴史を今に伝える珍しい建造物であることがわかりました。

潮が引くと現れる謎のアルファベット。

(近くに住む人)
「なんじゃろかこれ?なんの意味があるんかなあと思って」

(近くに住む人)
「なにかは知らなかったけど、生まれた頃からずっとあったから。僕らは『ちんしょ』『ちんしょ』って言ってました」

この石積みは一体?

(小寺真生記者)
「岡山市の旭川に来ています。こちら本来は川の中なんですが道が出来ています。これは一体なんなのでしょうか。よく見ると『T』の形をしているのがわかります」

岡山市中心部を流れる旭川。衛星写真で見みると…アルファベットの「T」がはっきりと見えます。探してみると、およそ8キロの間に19個あるのが分かりました。

大きな石で組まれた道のようなものが川の中央部で横に分岐。釣り場にしてはゴツゴツしていて足場が不安定です。この謎の石積みの正体は一体?川を管理している岡山河川事務所を訪ねました。

(国土交通省 岡山河川事務所 開発調査課 武本吉弘課長)
「T字型をした構造物なんですけど、『ケレップ水制』といって、旭川を含めて全国でも数か所しかないような構造物で、目的は昔船でいろいろな荷物を運搬していたころの役割。船が通りやすい環境を作る」

昭和初期、岡山市の玄関口は旭川の京橋港でした。海運の要所として多くの船が川を往来。商業の発展を支えました。しかし、そんな中…比較的流れのゆるやかな河口付近では土砂が堆積し、航路の妨げになることがあったといいます。この問題を解決するため、昭和初期に建設されたのがケレップ水制です。

元々、川幅が広くなる下流では水の流れが緩やかになり、土砂が溜まりやすくなっています。しかし、ここにケレップ水制=T字型の障害物を作ることで土砂がせき止められ、周辺に堆積します。その結果、ケレップ水制がない側に水の流れが集中。船が通るために必要な深さが保てるようになりました。

現在では、全国でも数か所しかない貴重な建造物として「岡山県の近代化遺産」に登録されているケレップ水制群。約90年間ほとんど変わらない姿で19基が残っています。船の往来がほとんど無くなった今、現存している意味とは・・・

(国土交通省 岡山河川事務所 開発調査課 武本吉弘課長)
「昔の目的として航路を確保するという意味での役割というのは無くなったというところはあるんですけど、ケレップ水制の周りに干潟が出来上がって、その干潟が貴重な生物とか良い生息環境になっているんで、そういったものをこれからも保全していくという意味ではこれからもケレップ水制は残していく」

(シジミとりに来た人)
「シジミとり。持って帰ってたべるよ」

ケレップ水制が作りだした自然の住み家にはチヌやシジミが集まり、魚釣りや潮干狩りにたくさんの人が訪れるようになりました。建設当時の役割は終えたものの、地域の住民にとっては生まれたときから変わらない大切な風景です。

(近くに住む人)
「見慣れたものだからどんどん形は変わっていくにして、新しく橋が出来たり、いろいろ変わっいくんでしょうけど、うーん、まあこの港は変わらないなあとか、どっかで変わらないところもあって欲しいなあというものはありますよね」

干潮時にだけ顔を出すケレップ水制。旭川のシンボルとして未来に残したい原風景です。

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