長崎ケーブルメディアがグランプリ独占 九州番組コンクール全2部門

グランプリ作品を制作した森山さん(左)と塩田さん=長崎市筑後町、長崎ケーブルメディア

 5月にあった第20回ケーブルテレビ九州番組コンクールで、長崎ケーブルメディア(長崎市、ncm)の作品が全2部門のグランプリを独占した。ドキュメンタリー番組部門では、旧産炭地の池島で唯一の食堂「かあちゃんの店」が閉店するまでの店主と全国のファンらの交流を追った。企画・バラエティ・情報番組部門では、“かえる先生”として知られる生物教員が新種発見に至る奮闘を振り返った。
 日本ケーブルテレビ連盟九州支部主催、総務省九州総合通信局や長崎新聞社など後援。グランプリ作品はncm番組「なんでんカフェ」で放送していた。映像は各30分弱。
 ドキュメンタリー18作品の中から最高賞に選ばれたのは「かあちゃんの料理は池島の味」。ディレクターの森山太郎さん(45)が2022年11月から約10回、島に渡って撮影や取材をした。

グランプリ作品「かあちゃんの料理は池島の味」の1場面(長崎ケーブルメディア提供)

 店は、かつて炭鉱マンの寮で食事を作っていた80代女性店主が閉山間もない頃から約20年間切り盛り。シニアカーで配達もして住民の生活を支え、観光客にも人気だったが、入居する公共施設の解体に伴い23年3月末で営業を終えた。
 店内の壁には来店客が書き込んだイラストやメッセージがびっしり。閉店すると聞いて駆け付けたファンらがトルコライスやちゃんぽんを味わいながら店主との思い出に浸り、慰労会を開いた元住民は涙をこらえ切れなかったという。
 森山さんは、8千人近くが住んでいた全盛時の島内の写真も探しだし、廃れた今の風景と対比させ時代の流れを浮き彫りにした。賞を受け「全国の人々に愛される名店が池島にあったという史実を、広く知ってもらえれば」と語った。

グランプリ作品「新種発見!かえる先生がカエルになった」の1場面(長崎ケーブルメディア提供)

 企画・バラエティ・情報の23作品のトップに輝いたのは「新種発見!かえる先生がカエルになった」。番組内で最も長い13年続く人気コーナー「かえる先生のいきもの交遊録」の特集編。出演する長崎女子短大教授の松尾公則さんが長年研究してきた、五島列島に生息するタゴガエルが23年8月に新種と確認されたのを機に、制作された。
 中途入社直後から担当ディレクターを任された塩田祐希さん(34)はまず、過去の映像記録を未放送シーンも含め全てチェック。その中に、松尾さんが旧知の伊藤雅男さん(現長崎バイオパーク園長)から「(新種と認められれば)松尾タゴガエルになるかも」とちゃかされ、それを「ならんならん」とあしらう-というシーンを見つけた。実際、学名の一部に名前が引用され、伊藤さんの“予言”が的中する朗らかなエピソードとなった。
 高校教諭時代からの半生や地域住民らと協力した湿地保全活動も紹介。塩田さんは「新種発見という節目に立ち会い、制作する使命感がわいた。携わった先輩7人の取材力も(視聴者に)感じていただけると思う」と話した。
 ncmは受賞記念放送を予定している。

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