闇米拒んだ山口判事の舞台「テミスの女神」、白石町で特別鑑賞 貫いた正義や信念描く、中学生が観劇

舞台「テミスの女神」で、病に伏す山口判事のために躍る白石町ゆかりの白石音頭=同町の有明スカイパークふれあい郷

 戦後の食糧難時代に闇米を拒んで亡くなった白石町出身の山口良忠判事を描く舞台「テミスの女神」の特別鑑賞が7日、同町で開かれた。町内の中学生約550人が観劇し、混乱期に正義や信念を貫いて後世に語り継がれる郷土の出身者の物語を堪能した。

 山口判事は戦後、食糧管理法に基づいて闇米に関わる人々を裁く立場から闇市で売られる米を拒み続けたことで知られる。栄養失調で肺結核を患い、1947(昭和22)年に33歳で亡くなった。放送中のNHK連続テレビ小説「虎に翼」に登場する花岡悟のモデルとされている。

 舞台では、闇米の取り締まりや法廷の様子、山口判事が白石町の実家で両親や兄弟と語り合う場面などが繰り広げられた。病床に伏す山口判事のために「白石音頭」を歌い踊るシーンもあった。

 鑑賞した3年の柴田理依愛さんは、社会の授業で山口判事について学んだことがあり、「死にさらされながらも良心に従って生きた山口判事は誰よりも正義感があると思う」と感想を話した。

 舞台にはオーディションで合格した町にゆかりのある17人も出演した。出演者の町出身の大串美津子さん(72)は、20年ほど前に山口判事の一生を記した本を読み、生き方に感銘を受けてオーディションを受けたという。「こんなにすごい人がいるんだと、白石から全国に発信したい」と熱く語った。

 特別鑑賞はケーブルワン(武雄市)の主催。4月に3校が統合して新しい白石中が開校した記念で有明スカイパークふれあい郷で行われ、同校の全校生徒が来場した。8日に同じ会場で開かれる舞台の一般鑑賞のチケットは完売している。(秋根紗香)

 

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