児童文学の礎 古田足日さん(四国中央出身)没後10年

白梅学園大図書館の古田足日さん寄贈書コーナーと設置に関わった教員ら=5月28日、東京都小平市

 累計発行240万部のロングセラー絵本「おしいれのぼうけん」の共著者として知られる四国中央市出身の児童文学作家・評論家、古田足日さん(1927~2014年)が亡くなり、8日で10年になる。多くの作品を生み出しただけでなく、戦後の児童文学評論の旗手として活躍し、児童文学界の礎を築いた功績に再び光が当てられている。

 旧川之江市に生まれ、軍国少年として育った。信じてきた価値観が敗戦で崩壊し、生きる指針を失う中、早稲田大在学中にアンデルセンの「はだかの王様」を読み返したのを機に、児童文学の世界に足を踏み入れた。「物語の中で王様を『裸』と指摘したのは子ども。だが、われわれ子どもは戦時中、真実を見抜けなかった。次世代の子どもたちに物事を自分で考え、行動に移せるようになってもらいたい」と生前語っている。

 東京の自宅に残された蔵書や原稿などの資料は各所に遺贈された。

 直筆原稿を受け継いだ県立神奈川近代文学館(横浜市)では8月10日~9月29日に企画展「没後10年 古田足日のぼうけん」を開催し、創作と評論の双方から挑戦を重ねた姿をたどる。編集委員として携わる宮川健郎・武蔵野大名誉教授は「子どもを中心に世界を見たらどうなるかと、ずっと考えていた人。そういった世界の見方は、今意味があると改めて思う」と話している。(中田佐知子)

 <7月中旬からまなぶ面で連載記事を掲載します>

古田足日さん

© 株式会社愛媛新聞社