刺さる?

 この小説マジ刺さる、この曲の歌詞が刺さるんよ。「ササる」とカタカナで書く方が雰囲気が伝わるだろうか。「刺さる」という言葉が深い感動や共感などを表現する際に使われることがある▲この政策はその意味で誰かに「刺さって」いるのだろうか、といつも考える。「子ども・子育て支援金」制度の創設などを柱とする少子化対策関連法が成立した。首相肝いりの「異次元の少子化対策」の一環だが▲児童手当の拡充も保育サービスの充実も「生まれてきた子」やその親に対する支援だ。新しい生命を温かく歓迎することに異論はない。だが、子を持つ選択や決断は、もっと前の段階にある▲皮肉な取り合わせと言うほかない。同じ日の新聞に2023年の出生数と合計特殊出生率を伝える記事があった。「過去最少」「最低」…見慣れた単語が並ぶ。「刺さっていない」ことの証拠に思える▲記事は少子化の理由を〈未婚・晩婚化〉だと言い切っている。そこへ政府の少子化対策-なのだが、児童手当の増額に誘われて子を持とうと考える人がどれほどいるだろう。的が外れているのでは刺さりようもない▲ところで…。「少子化のニュースを見るたびに責められてるような気がする」という感想を身近な場所でしばしば耳にする。この刺さり方はよくない。(智)

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