珍しい「3府県境」あり! 山頂からの「大パノラマ」&「古代ご神体岩」絶景の「深山」登山レポ

深山山頂からの眺望(撮影:野口宣存)

北摂山(ほくせつさん)系の最高峰として知られる深山(みやま・標高790.5m)は、登山初心者にも人気の山で、天候が良ければ大阪湾まで見渡せる壮大なパノラマが人気。京都府南丹市(なんたんし)と大阪府豊能郡能勢町(とよのぐんのせちょう)の境界に位置する大阪50山の一つだ。

深山には、絶景スポットが2か所ある。一つは山頂の深山宮(みやまぐう)、もう一つは、筆者が「深山第二山頂」と仮称する山頂付近のピークだ。深山宮は山頂にある大岩をご神体とする社のない神社で、別名「深山神社」という。山自体をご神体とする古代祭祀の名残である。

また「深山第二山頂」は、山頂と間違えられることも多いスポット。実は深山には何回も登っている筆者も、初めて登った際は「深山第二山頂」を山頂と思い、本当の山頂には行かずに下山してしまった。つまり「深山第二山頂」もそれほど絶景ということだ。

深山の登山ルートはいくつもあるが、今回紹介するのは登山以外にも見どころが多い、兵庫県立ささやまの森公園ルートである。

■ささやまの森公園:東尾根コース

ささやまの森公園から深山までのコースは、東尾根コース、西尾根コース、渓谷コースの三つがあり、今回は東尾根コースから登り、渓谷コースで下山した。

ささやまの森公園活動拠点施設付近の東尾根コースは「ささもりのステージ」という野外ステージから始まり、「雑木林の散策路」を登る。ささやまの森公園でいう散策路とは登山道で、雑木林の散策路は名前とは裏腹に急登の登山道だ。この急登を登りきると、松尾台の東屋。ささやまの森公園内にある八幡谷(はちまんだに)ダムを一望できる絶景スポットだ。

東屋から蛇岩(へびいわ・標高526m)展望台を経由し、舩谷山(ふなたにやま・標高730m)まで急というほどでもないが、ゆるくもない道をひたすら登る。蛇岩は室町時代の山城跡のような場所。展望台と書いているくらいなので、以前は眺望が良かったのかもしれないが、木が茂っていて眺望がない。

舩谷山は京都府・大阪府・兵庫県の3府県にまたがる山。眺望は全くない。舩谷山から深山山頂まではゆるい登り。道も格段に歩きやすくなる。この登山道には馬のひづめの跡があった。深山第二山頂付近には乗馬クラブがあり、ホーストレッキングを行っているらしい。恐らくこのルートも使われているのだろう。

深山山頂に近付くと、道がススキ原に変わり、正面に山頂に鎮座する深山宮のご神体である大岩が見えてくる。

■ささやまの森公園:渓谷コース

渓谷コースはささやまの森公園のゆるい坂の舗装路を奥まで行った「林道奥」から始まる。最初にゆるい坂が続く分、舩谷山まで一気に登る急登。林道奥から渓谷沿いに西尾根コースとの合流地点、庫坂峠(くらさかとうげ・標高638m)を経由して、舩谷山に至る。

今回は下山ルートとして、渓谷コースを選択。道標が多いため、迷う心配もなかった。しかし、渓谷コースはやや足場が悪いので、登りのコースで通るのが無難と感じた。

なお、渓谷コースでは庫坂峠から染み出した水が徐々に渓流になっていく様子を見ながら下山できる。逆に登りの場合は源流探訪だ。渓谷コースは苔むした渓谷美が魅力である。

■絶景、深山山頂と深山第二山頂(仮称)

深山の名前は、大阪府・兵庫県と3府県にまたがる山脈の最深部に位置することに由来する。山頂にはご神体の大岩「深山宮」がある。ご神体は立入禁止だが、ご神体を一周する小道は目の前に遮るものが何もない絶景スポット。北側にはずっと奥まで広がる丹波の山々が見渡せて爽快だ。

深山宮正面には深山レーダー雨量観測所があり、そこから続く舗装林道を少し下ると、深山第二山頂が見えてくる。ススキに覆われ、いかにも絶景スポットという雰囲気を醸し出しているので、見落とすことはないだろう。

深山第二山頂から東側を見ると、真下に「るり溪ゴルフクラブ」と「京都府立るり渓自然公園」の高原リゾートが見下ろせ、南側には北摂の山々が一望できる。筆者が訪れたこの日は、快晴ではあったがモヤがかかっており、残念ながら大阪湾までは見渡せなかった。

■見どころいっぱい、兵庫県立ささやまの森公園

今回、登山口に選んだ兵庫県立ささやまの森公園自体は見どころがいっぱいのスポットだ。

活動拠点施設付近は舗装された緩やかな道で散歩に最適。昔懐かしい手押しポンプの井戸や木製の太鼓橋、木彫りのオブジェや遊具、森の迷路など、家族連れでも丸一日楽しめるスポットが満載だ。また解説の看板も多く、例えば杉の植林の中に突然現れる石垣も、「昔は水田で石垣は猪除けだった」という解説があり、知識欲も満たされる。

雑木林の散策路、黄葉樹の散策路など、テーマに分かれた散策路もささやまの森公園の見どころ。ただ散策路は散歩道ではなく登山道になるため、登山靴などの登山装備が必須となる。

ささやまの森公園の楽しみ方は、登山以外にも散歩、散策、トレラン、野鳥観察などさまざま。

なお、開園時間は9:00〜17:00まで。月曜日は休園日だ。月曜日が祝日の場合は、その翌日以降の平日が休園日、12月29日〜1月3日も休園日になるので、確認してから出かけたい。

■兵庫県立ささやまの森公園への行き方

兵庫県立ささやまの森公園へのアクセス方法は、車が最も便利。高速道路を使う場合、舞鶴若狭自動車道・丹南篠山口ICから約18km、約30分。一般道利用は、国道173号線と国道372号線が交わる「安田西」交差点の100m南、ローソン篠山安田店の裏から篠山街道を東へ入る。少し走ると公園入口の看板があるのでわかりやすい。

絶景の深山、見どころ満載のささやまの森公園の紹介であった。登山ビギナーで自信のない方は、ちょっと様子見で、ささやまの森公園だけでものぞいてみよう。

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