逆転Vの大里桃子が初のメジャー切符獲得 親友・渋野日向子も待つ全英に向けて「まずパスポートを用意しないと」

大里桃子が笑顔の復活V いざ全英へ!(撮影:福田文平)

<宮里藍 サントリーレディス 最終日◇9日◇六甲国際ゴルフ倶楽部(兵庫県)◇ 6545ヤード・パー72>

最後まで攻めのゴルフを貫いた大里桃子が大混戦の優勝争いを制した。首位と1打差の2位から出た2年ぶりの最終日最終組だったが、「緊張はなかった」と逆転で3年ぶりのツアー通算3勝目をつかんだ。1打リードで迎えた最終18番パー4も池とバンカーがある左サイドに切られたピンを果敢に狙い、2打目をピン手前1.5メートルにつけてバーディ締め。最初から最後まで険しい顔つきだった勝者は「ずっと集中していたから、そう見えたのかもしれませんね。疲れた」とようやく表情を緩め、涙のあとには軽口も飛び出した。

「優勝争いをしているときに逃げたら負けだと思っていた。自分のゴルフに徹し、逃げないことを心がけた。そこから解放されて、最後はガッツポーズをしたかったけど、ホッとしてしまって…。ガッツポーズをできなかったのが一番悔しい」

表彰式では大会アンバサダーの宮里藍から優勝ブレザーを着せてもらった。日本中に“藍ちゃんフィーバー”が巻き起こったころにゴルフを始めた1998年度生まれの黄金世代にとって、宮里は共通項ともいえる憧れの存在だ。98年8月生まれの大里も当然その一人で「本当に憧れの方です。夢みたいでうれしい」と感激のツーショットに顔を上気させた。

2018年の初優勝は、2度目の挑戦でプロテストに合格して日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の会員となって、わずか23日のツアー最速Vだった。21年の2勝目はイップス寸前の状態に陥っていたパットの悩みを克服して、つかんだ。そこから再び3年の時間を要して手にした3勝目は、屈辱のシード落ちからの復活となった。昨季は腰痛などにも苦しみ、メルセデス・ランキングは86位に沈み、4季守っていたシードを失った。QTランク5位の資格で出場する今季も4月までは5度の予選落ち。それでも昨夏の「日本女子オープン」最終予選でたまたまチャンレンジして好感触だったフェードに球筋を変えて、ティショットの精度は飛躍的に上がった。「いろんなところが痛かった」という満身創痍の体もトレーニングなどで一から見直し、「ケガをしないことを目指した」とスイング改造にも着手した。

「なにをしてもネガティブ。もう辞めようかなとか…。でも、今はゴルフが楽しい」。ようやく抜けた暗いトンネル。約1年ぶりにキャディを務めた島中大輔氏も「パットに苦しんでいたときに担いだこともあるし、本当に良かった。今週の彼女は本当にゴルフも気持ちも強かった」とうなずいた。昨年はエースキャディとして中島啓太の賞金王をサポート。優勝が決まった直後の島中氏の携帯電話には、中島からの祝福のLINEが早速入っていた。

今大会で優勝したことによって8月の「AIG女子オープン」(全英)の出場権も獲得した。メジャーどころかプロになってからはプライベートでも縁がなかった海外。「熊本の実家に帰るので、まずはパスポートですね。準備したい。海外に行くのは高校生以来で、人生で一番遠いところに行くことになりそうです」。次戦の「ニチレイレディス」までにうれしい予定も入った。英国では同い年でジュニア時代から仲のいい渋野日向子も待っている。「渋野とは会う機会も減ってしまったけど、行く前に連絡します。経験者にいろいろ教えてもらいたいし、練習ラウンドも一緒に回ってほしいですね」。

「全米女子オープン」で2位となった渋野も復活モード。輝きを取り戻した2人が、タッグを組んで夏をさらに熱くする。(文・臼杵孝志)

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