「定額減税」6月の給与明細をもらったら、ぜひ確認を 5人家族なら20万円減税 所得税・住民税…7月以降はどうなる? ファイナンシャルプランナーがわかりやすく解説

今年6月から定額減税が実施され、年齢に関係なく1人4万円(所得税3万円と個人住民税1万円)が減税されます。
減税はどのように行われるのか、減税分は給与明細のどの部分で確認できるのか…気になる様々な点を、ファイナンシャルプランナーの石川博康さんにわかりやすく解説してもらいました。

「1人4万円の定額減税」、今回の減税のポイントは2つあります。

まず「定額」であることです。所得が多い人も少ない人も一律4万円が減税されます。

減税の方法といえば、所得税などの税率を低くする「定率減税」と税額自体を差し引く「定額減税」があります。

ではなぜ今回、「定額」になったのでしょうか?

それは低所得者に優しいのが「定額」だからです。
収入が少ない人と多い人で減税額を比べてみましょう

収入が少なく所得税を年間3万円納めているAさんと、収入が多く所得税を年間100万円納めているBさんで比べてみます。

まず「定率減税」ですが、消費税や所得税の税率を下げることで負担を軽くする仕組みです。

例えば所得税を5%定率減税した場合、収入が少ないAさんの減税額は3万円×5%=1500円の減税。
一方で収入が多いBさんの減税額は100万円×5%=5万円の減税となります。

定率減税は、高所得者ほど減税額が大きくなる一方、低所得者は減税の実感が湧きにくくなります。

一方、「定額減税」は収入の大小にかかわらず一定額が減税されます。

今回のケースはAさんもBさんも所得税3万円が減税されます。
収入の少ないAさんは減税効果が大きくなります。

今回、政府は物価高に苦しむ低所得者などを支援しようと、「定額」にしたのです。

もう一つのポイントは「対象者全員が減税」されることです。

定額減税の対象となる人は、給与収入が2000万円以下の納税者です。さらに納税者本人だけでなく、配偶者を含めた扶養家族も対象となります。

例えば夫婦と子ども3人の5人家族・Cさんの場合、世帯全体では4万円×5人分=20万円が減税されることになります。

ただ、今回の制度でわかりにくいのが、その減税方法です。

4万円減税の内訳は所得税3万円・住民税1万円ですが、それぞれで減税方法が異なるのです。

まず所得税ですが、給与所得者は、6月分給与、またはボーナスで源泉徴収される所得税から控除されます。
控除しきれなかった金額は、次回の給与またはボーナスで源泉徴収される所得税から順次控除されます。

先程の5人家族・Cさんの場合、3万円×5=15万円が控除されます。

例えば、6月分の給与で所得税2万円を支払う予定だったCさんは、6月分の所得税はゼロに。さらに所得税から引ききれなかった残りの13万円分は次回以降の給与や賞与から順次引かれます。

一方、住民税1万円の減税方法です。

6月分の住民税は徴収されません。そして7月分から、減税額から差し引いた額を11等分し、来年5月分まで毎月特別徴収されます。

特に、6月は所得税と住民税がゼロになる人も多く、手取りが増えて減税されたことを実感できるかもしれません。

さて、6月の給与明細をもらったという方はぜひご覧ください。今回の定額減税を確認できたと思います。
なお、手取りの増加を実感してもらおうと、給与明細には減税額が明記されています。

■6月の給与明細をもらって…疑問点

こうした中、先ほど紹介した夫婦と3人の子どもを持つ5人家族のCさんから、
「4万円×5人=20万円が今月減税されると思っていたが、6月の明細を見ると数万円しか減税されていない。減税されなかった差額のお金はどうなるの?」
と質問がありました。

確かにCさんの言う通り、今回の減税は1人あたり4万円です。
内訳は所得税3万円・住民税が1万円。ただ減税の方法はちょっと複雑です。

まず所得税ついて。
6月の給与や賞与で1度に減税しきれない分は、翌月以降も繰り返し減税されます。
Cさんのケースだと減税額が総額15万円(3万円×5人分)になるまで減税が続きます。

また住民税について。6月分の住民税は徴収されません。
そして翌7月分から、Cさんのケースだと1万円×5人分=5万円分を差し引いた額を11等分し、来年5月分まで毎月納税します。

なお、令和6年分の納税額が定額減税の総額より小さい場合は、満額が減税しきれないことになります。
その際は減税しきれない額を1万円単位に切り上げて算出し「調整給付金」としてもらえることになります。

しかし、今回の減税で問題点もあります。

それは今回の定額減税は「一度きり」ということです。
政府は今回の定額減税はデフレを完全脱却するために実施するもので、複数年度にわたって実施することは考えていないとしてます。

その一方で物価高は当面続く見込みで、景気浮揚につながるかどうかは不透明です。
そのため減税の継続論も上がっていて、効果も含め今後も議論が続きそうです。

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