illustrator / SHOKO TAKAHASHI
精神科医が解説
やることが多くて疲れているそんな私たちへの処方箋
「やること」に追われていると、心身ともに疲れてしまいます。やることが多く、終わらないとイライラするのは性格のせい?考え過ぎ?と自分が嫌になってしまうことも。その原因、対処方法について早稲田メンタルクリニックの益田裕介先生に聞きました。
( 教えてくれたのは )
早稲田メンタルクリニック
院長益田裕介先生
精神保健指定医、精神科専門医・指導医。精神科診療について解説するYouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」を運営し、登録者数は56万人を超える。著書に「精神科医が教える 親を憎むのをやめる方法」(KADOKAWA)などがある
Commentary
なぜ「やること」が多く傷つき、悩んでしまっているのか
女性の人生は複雑でライフステージごとに悩みは変化し、健康、家族、友人、仕事、学び、趣味、お金の問題にも直面します。これらの問題について、一般的に男性は機械的でこだわりや関心が無いことに対して、女性は情緒豊かで空気を読む傾向があるため「やること」が多くなってしまいます。同じ境遇で同じ問題に対面しながらも、男女で捉え方が異なるため、すれ違いが生じているのです。
女性活躍推進法、働き方改革関連法があり、育児に関する支援や法律も整備されてきました。しかし、女性が働きやすくなったかというとまだ発展途上です。しがらみの多い男性社会で働くこと、女性同士の軋轢(あつれき)、家事や育児など家族への責任に縛られて生きづらさを感じています。
心は脳であり、脳は疲れをためやすい
心は無限だと思っている人が多いですが、心は脳という臓器が生み出している現象にすぎません。そして脳の疲労は自覚しにくいものです。疲れが何カ月も蓄積し、うつ病になってから初めて分かることもあります。疲れを自覚しにくいことの原因はいくつかあり、スマホなどを見ることでの情報刺激やカフェインなどの刺激物などがあります。また、脳が疲れるのは、原因が積み重なったときでもあります。例えば仕事が忙しいときに家庭でトラブルが発生した…。問題が1つであればやり過ごせるのに、問題やストレスが積み重なると脳は疲労します。イライラしやすい、怒りっぽい、不安になりやすいなど、感情に支配されやすくなっているのは疲れているサインです。
頭の中を整理し疲れない考え方をする
頭の中が整理できていないと心身が休まらない状態になります。問題が解決していなくても、頭の中が整理され、責任の所在ややるべきことが分かっていれば、心身を休めることは容易になります。また、何事もほどほどにやる、という疲れにくい考え方が必要です。完璧主義や白黒思考をやめ、休息を取り、責任を感じ過ぎない。ときにはあきらめ、運命を受け入れることが必要です。まずは、自分が疲れてしまう原因を頭の中で整理することが大切です。疲れの原因が分かっていれば対処方法も見つかります。
知ること、学ぶことで世界の見え方が変わる
同じような困難に遭遇したとき、人によってダメージの重さや回復までにかかる時間は異なります。例えるなら「新宿駅の迷子」。子どもは迷子になると泣くばかりで誰かに助けてもらうのを待つしかないですが、大人は不機嫌や不安になりながらも人に聞くなどして対処できます。知識や経験があれば解決できることもあります。
解決能力を高めていくには、一つひとつの小さな知識、行動力、気持ちの切り替えの速さなどが重要で、それらを少しずつ成長させていく必要があります。一つひとつは小さくても、知り、学ぶことで見えてくる景色も変わってくるでしょう。
Seek advice
Q. なぜ、女性ばかりが家事をするの?
夫は「ごみ捨てをお願い」などと言わないと動きません。毎回言うのも面倒です。
A. 家事のリスト化
まず、男性は一点集中タイプ、女性はマルチタスクタイプです。個人差はありますが、頭の中で家事を把握できる女性に対して、男性は目に見えない家事には気が付きません。「やらない」のではなく、「気が付かない」「関心が無い」のです。家事分担をするのであれば、家事をリスト化し、男性には仕事のように考えてもらうことが近道です。
Q. 誰に相談するべきなのか?
子育てと仕事の両立のことで悩みがあります。やはり同僚など、自分のことを知っている身近な人に相談するのがいいのでしょうか。
A. 相談は利害関係のない人に
身近な人だとバイアスがかかっていたり、相談することで新たな軋轢(あつれき)が生じてしまったり、マウントを取られることになったり、弱みを握られたりするケースもあります。相談は利害関係のない人を選んだ方がいいです。
Q. 自分の精神状態を知るには?
いつもイライラしてしまい、周囲に強くあたってしまう自分が嫌です。心の疲れ具合を知る方法はありますか?
A. 5分間の瞑想(めいそう)を
判断基準の1つとして、まずは5分間瞑想(めいそう)をしてみてください。目を閉じて自分の呼吸に集中。そのときに何か考えや悩みを思い出しても問題ありません。心が疲れきっている人、うつ病の人は瞑想中に息苦しくなり、5分間目を閉じていることもできません。
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