被災地の廃材、万博の案内板に 輪島朝市や酒蔵から回収 金沢の金森合金製作 大阪の鋳物師、加賀藩招き創業

アルミの鋳造作業を見守る高下さん(左)=金沢市松村6丁目の金森合金

 能登半島地震の被災地で発生した廃材が、万博の「顔」に生まれ変わる。2025年大阪・関西万博の会場で来場者を導く案内板に、大規模火災に見舞われた輪島朝市や損壊した酒蔵のサッシのほか、各家庭で使われたフライパンなど思い出の品を再精製したアルミが使われることが決まった。手掛けるのは、加賀藩主が招いた鋳物師をルーツに持つ金沢のメーカー。万博終了後には被災地に案内板を贈り、復興を象徴する「レガシー(遺産)」としてもらう。

 会場で万博参加国のパビリオンの場所などを示す案内板を製作するのは、金沢市の金森合金。公費解体が始まった朝市などで見つかったサッシに加え、復旧作業が続く七尾市の和倉温泉から出た廃棄物、兼六園や加賀地域で回収した空き缶なども生かす計画だという。

 今後、日本国際博覧会協会(万博協会)側と詳細を詰める見通しだが、新聞の刷版などと合わせ、電気炉で800度の高温で溶かし、不純物を取り除いた上で、鋳造して仕上げる。

 3~5基ほど作る想定で、年明けごろまでに完成させ、来年4月13日~10月13日の万博会期中、会場に設置し、その後、被災地に寄贈する。金森合金の取り組みは万博協会が選定する「未来社会ショーケース事業」の特別プログラムに決まった。

 もともと同社のルーツは万博開催地の大阪。1611(慶長16)年、高岡開町の祖で加賀藩2代藩主の前田利長が現在の高岡市の金森弥右衛門ら鋳物師7人を招き、鋳物生産を開始したことが創業のきっかけとなった。

 400年余の年月を経て大阪に案内板を納めることになり、同社24代目の高下(こうげ)裕子さん(38)は「深い縁を感じる。被災地の人々の思い出や物語が詰まった大切な品を案内板とすることで100年先に記憶を紡いでいきたい」と話した。

  ●会期中は工場開放

 金森合金では、万博会期中に一般の工場見学を受け入れ、「砂型鋳造」の技術を紹介する。見学者にアルミ廃材を持ち寄ってもらい、職人の手ほどきで皿やカトラリー、菓子切りなどオリジナルの記念品を制作してもらう。石川県内のホテルのレストランや観光名所と連携し、見学者に作ってもらった食器を生かした食のイベント開催も予定している。

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