「大学生相手にルキアンは反則」甲南大指揮官が、湘南の主力を“引きずり出した”選手たちを賞賛「期待以上のプレーを見せてくれた」【天皇杯】

甲南大は6月12日、天皇杯2回戦で湘南ベルマーレと敵地で対戦。1-3で敗れた。

悔しい結果に終わったが、竹口清一監督は選手たちの奮闘を称える。

「学生たちは持っているものを出し切ってくれた。ボールを持たれる時間が長く、選手たちは相手の圧をピッチの中で感じていたはずです。上手くいかないなかでも、最後の最後に身体を張るところは、今までやってきたことが出た。悔いはないと思います」

何人もの選手が試合終了の笛と同時にピッチに倒れ込んだほど、すべてを出し切った一戦で得たものは大きいはずだ。

先に試合を動かしたのは湘南だった。37分、CKの流れから小野瀬康介がミドルシュートを放つと、ゴール手前で山田直輝がコースを変えてネットを揺らした。

その後、甲南大も粘りを見せる。幾度と訪れたピンチをGKの板敷洸大を中心に身体を張って凌ぎ、最少失点で前半を終えると、後半立ち上がりの49分、松野隼輝のFKに清水健生が合わせて同点に。このゴールでアウェーチームが勢いづき、相手のミスを突いて、いくつかのチャンスを創出した。

ただ、79分に湘南がルキアンを投入すると、流れが一変する。80分、岡本拓也のクロスを交代直後の背番号11が流し込み、湘南が勝ち越しに成功。また、90+6分に得たPKをルキアンが落ち着いて決めて、勝負あり。

【PHOTO】勝利を願い選手と共に闘った湘南ベルマーレサポーター
竹口監督は、わずか10分強で2ゴールを挙げた湘南FWルキアンを賞賛しつつ、試合を次のように振り返る。

「スピード感も強度も違う相手に対して、立ち上がりの15分から20分で失点しない展開を作り、前半を0-0、ないし0-1以内で帰ってこられればいいという狙いでした。後半、なんとか主力選手を引きずり出そうというなかで、同点に追いつき、想定通りの形になった。大学生相手にルキアンは反則だなと思いましたけど(笑)」

数々のビッグセーブを見せたGKの板敷も、試合後に「ルキアン上手すぎ」と笑顔でもらすほど、この日のブラジリアンの存在感は圧倒的だった。竹口監督は、こうした選手を“引きずり出した”価値も大いにあるという。

「ルキアンを含め、Jリーグで戦う主力の選手たちと大学生が戦えたのは大きいですし、そこまで持っていけた、という意味では、学生たちは期待以上のプレーを見せてくれました」

J3のツエーゲン金沢をPK戦の末に下した1回戦を含め、今季の天皇杯は甲南大にとって大きな経験値を得た大会だったと言える。プロクラブを相手に掴んだ自信を活かし、さらなる飛躍に注目したい。

取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)

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