“灼熱の観覧車”に乗り3時間…渾身の一枚 愛されて45周年「とちのきファミリーランド」に連れてって 県民の日記念、16日までワンデーパス割引

 「パパ、ママ、とちのきファミリーランドに連れてって」-。このキャッチコピーで親しまれている人気の遊園地「とちのきファミリーランド」(宇都宮市西川田4丁目)が今年、開園45周年を迎えた。15日の「県民の日」を記念し1日乗り放題のワンデーパスを割引していることもあり、この日に合わせて園内を見渡す写真で、県民に愛され続けてきた遊園地を紹介したい。意気揚々と向かったが、くしくも14日は気温が上がり、真夏日の予報。撮影のため“灼熱(しゃくねつ)”の大観覧車に身を投じた記者の命運は-。

 同園は1979年4月、翌年に開かれる第35回国民体育大会「栃の葉国体」の記念事業の一環として、県総合運動公園内に整備された。総事業費は5億6千万円。開園当時のパンフレットには「家族そろってサァー楽しく遊ぼう!」の文字が躍る。ジェットコースターは大人250円で、現在の半額ほどだった。

 開園初日の記事によると、一番乗りの小学5年生は午前3時に到着。同10時過ぎの開園時には約1万3千人が行列を作ったという。この日の入園者数は3万人と県民の注目度の高さがうかがえる。

 開園当時小学生だった整備担当太田勝治(おおたかつじ)さん(52)は「幼い弟と手をつなぎ何度も来た。観覧車が好きだった。周辺はまだ野原が多かった」と振り返った。

 当初9種類だったアトラクションは現在14種類に増えた。今も昔も、一番人気はジェットコースター。2011年に車両を新幹線E5系はやぶさ型にリニューアルし現役で稼働している。

 昨年度までの利用者数が約6千2万人に上った人気の遊園地。高さ30メートルの大観覧車の頂点から園内を見渡す写真を読者に届けたい。前日までの下見で撮影場所を決めていた。同園の協力を得て、無料で乗せてもらえることになった。

 同園からは「かなり気温が上がる予報。エアコンないけど大丈夫?」と心配された。午前9時時点でゴンドラ内の温度は既に34度。しかし「県民の日」に合わせた取材を逃しては、45年間、県民に親しまれてきた歴史を紹介できないと、意を決して乗り込んだ。

 ただ、1周6分でゆっくりと回る大観覧車。来園者の人の流れや、ジェットコースターの運行など周囲のアトラクションとのタイミングが合わず、なかなか思い通りの写真が撮れない。

 「間に合わない!もう少し早く回ってよ!」

 てっぺん近くでぼやいてみたりしたが、ゴンドラは穏やかに回り続けた。地上に戻って来ると、係員さんからうちわの差し入れやガッツポーズの応援。滝のように汗を流しながら、カメラを構え、ひたすらその時を待った。

 午後1時5分。眼下に昼食を終えた来園者がどっと現れ、園内が一気ににぎやかになった。ちょうどジェットコースターも走ってきた。「今だ」。その一瞬を狙って、空やアトラクションの配置を気にしながら画角を変えて5回ほどシャッターを切った。

 無事撮影が完了した。

 開始から約3時間がたっていた。1周6分だけに30回乗り続けた計算。45年の歴史の中で最も長く観覧車に乗った乗客に違いない。

 ゴンドラを下りると園内は乗り放題のワンデーパスのバンドを身に着けた親子連れらでにぎわい、歓声が響いていた。

 回転遊具「キッズウイング」を楽しんだ大田原市若松町、保育園年長星心詞(ほしみこと)ちゃん(6)は「初めて来た。いっぱい乗れてうれしい」と笑顔。お父さんは「気に入ったみたいで…。7、8回は乗っています」と苦笑いしていた。

 帰りがけ、乗り物の激しさが足りない気がして、絶叫系アトラクション「雷様(らいさま)ストーム」に挑戦した。照りつける太陽の下、最高時速30キロで回転する遊具で風を切り、涼しそうだ。係員さんからは「大きな声出していいよ」。取材を忘れ、大絶叫した。強い遠心力と浮遊感で疲れも吹っ飛んだ。

 県民の日記念の1日乗り放題のワンデーパスの割引は16日まで。大人(高校生以上)は通常3500円が2700円に、小人(3歳~中学生)は通常2800円が2千円になる。

 真夏日のゴンドラの中で格闘した一枚。遊園地への“県民愛”を表現できただろうか。一方で、頑張りすぎたと反省している。読者の皆さんにはお薦めしない。15日も宇都宮の最高気温は30度を超える予想。ワンデーパスで観覧車の最長乗車記録の更新に挑まないまでも、熱中症に気を付けて、楽しい「県民の日」を過ごしてほしい。

オープン当時の「とちのきファミリーランド」
県民に愛され、開園45周年を迎えた「とちのきファミリーランド」。観覧車からは各種の乗り物を楽しむ来園者の姿が見られた=14日午後1時5分、宇都宮市西川田4丁目

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